2007年度受賞結果の概要

2007年度審査委員/審査講評

2007年度グッドデザイン賞審査講評

B. 建築・環境デザイン部門
B01:建築デザイン1(戸建住宅、産業、公共、商業施設等)

北山 恒

建築家


今年度の建築・環境デザイン部門は3つのユニットに分類された。私の担当するのは建築デザイン審査ユニットである。これまで建築デザインと環境デザインの2つのユニットであったのが、建築デザインがさらに二分され商品住宅・マンション審査ユニットと建築デザイン審査ユニットとなった。商品住宅・マンションユニットは工業化住宅や事業用マンションなど、マーケットの中で商品として認識されるものであるから、商品としての産業デザイン振興を目的としていたGマークの本来的意図に合致する。それは、建築という領域をGマークの対象とする場合には最も正統的な評価が可能である領域である。その本来的な商品という評価からはずれる様々な建築群を建築ユニットとして分類されているのかも知れない。というわけでこのユニットが対象とする建築はインテリアデザインから、小住宅、病院、寺、公共建築、大型の再開発まで多種多様である。
Gマークが建築・環境領域を賞の対象としたのは10年ほど前なのだが、建築という領域では日本建築学会の作品賞や作品選奨、日本建築家協会の建築大賞、建築士会の住宅建築賞そして地方自治体の主催するもの民間の主催するものなど、様々な顕彰が存在する。その多くは建築の「作品性」を評価対象とするものである。それは建築そのものの形態の美しさであったり、内部空間の見事さであったりする。美術品として鑑賞するように評価されるため現地でその建築を体験することが前提となる。審査員も当然のことながら建築の「作品性」を判定できる特別な「眼」であることが要求される。それに対してGマークでの評価は「商品」として建築を評価する視点を取り込んだことが重要であろう。本来はその場所にしか存在できないという唯一性をもつ建築作品を「商品」と等価に扱うことは、建築を対象領域とした当初は困難であったはずである。
そこで本年度の建築デザインの審査チームでは、審査に入る前にGマーク独自の評価基準をもつことについて十分に協議した。そこでは、Gマークで評価する建築は、その建築を使用するユーザー側から建築を評価することであり、現地審査を行わなくても書類から読み取れる内容で審査ができる分かり易さが要求されていると考えた。これは特殊解ではなく一般解として捉えようということである。それはまた、日常的な生活の場に有益なものであることがひとつの指標になっていると考える。本年度、商品住宅・マンション審査ユニットと建築デザイン審査ユニットのふたつのユニットにわかれて、商品住宅・マンションユニットはさらにその「商品」性能を審査するという性格が明確になっていると思われる。だからこそ、本年度の建築デザインユニットでは「商品」という概念でくくれる建築の評価軸でもなく、また「作品」という評価軸でもない、Gマークという場面で建築デザインを評価する事項が必要であった。そして、我々はまずは「社会性」という概念で読み解くことにしたのである。200点を超える応募作品をこのような観点で審査したのであるが、その建築の用途であったり、建築を計画した主体であったり、建築を企図した背景など、モノとしてのあり方から、それができる以前の状況まで、審査の情報としては必要であった。
Gマークの賞の対象となる建築は、空間性などを審査する特別な「眼」を必要としない、ジェネリックな存在であって、なおかつ新しい社会ないし生活を切り開いていくことを予見させる建築であると考える。このような視座を確認することで、書類審査においてはかなり正確に判定することができたと思う。さらに、書類からだけでは内容が読み取れないため現地で調査を必要とすると判断する建築もあり、それらについては現地審査をおこなった。
最終的には現代の社会が必要とし、しかも何でもない日常に対して明確な思想を持った建築を評価できたと思う。それは、環境への対応を示す建築や、今まで無用のものであったものに新しい存在理由を与える建築、そして地方都市や地場産業をサポートする建築、共同体を再生することが意図された建築、などが評価されたものである。
そしてさらに、本来は唯一性をもつ建築であるが、本年度の審査においては、そのコンセプトや技術が他の場面にも有用に働く「再現の可用性」や、またモノとしての「工法の合理性」が重要な評価軸と認識されていたことを記す。(審査ユニット長 山 恒)