2007年度受賞結果の概要

2007年度審査委員/審査講評

2007年度グッドデザイン賞審査講評

C. コミュニケーションデザイン部門
C02:デジタルメディア

中谷 日出

映像アートディレクター


ネットワーク社会における様々なコンテンツやサービスは私たちの仕事や生活、そして社会全体に大きな影響を与えています。また、デジタルメディアやデジタルコンテンツは今後も増大し隆盛を極めていくことは間違いないですし、これを回避することはもはや不可能です。そうなればデザインの役割も大きく変わっていきますし、デザインへの期待もますます高まっていくはずです。
そのような状況の中、グッドデザイン賞もデジタルメディアの領域に関し果たすべき役割も大きく変わるべきであると考え、部門の再編や審査対象に関し正副委員長と相談を繰り返し今年度リニューアルすることにしました。
具体的には、従来商品部門で審査をしていたゲームソフトやコンピュータアプリケーション、ソフトウェア、業務用コンピュータシステムなどを分離させ、またコミュニケーション部門で審査をしていたウェブサイトやデジタルコンテンツなどとを統合し、コミュニケーション部門内に新しいユニット「デジタルメディア」を新設しました。当然、審査委員構成もその分野にかなりの専門知識と深い審美眼を持つ方に参画してもらい新たに組織しました。
グッドデザイン賞は、プロダクトや建築などカタチあるもののデザインがまだ大多数を占めており、ソフトウェアやネットワークにおけるサービスのデザインにGマークが付くという認識は残念ながらまだ世の中では低いと思います。ソフトウェアやネットワークサービス自体にGマークが付くということはどういうことなのでしょうか?単純に画面のグラフィックデザインというだけではないことはいうまでもありません。世の中に広く流通し多くのユーザーがいるということだけでもないでしょう。もちろん多くの人々に使われるということは大切なことです。それもグッドデザイン賞の要件に含まれることも事実です。
しかし、グッドデザイン賞という審査で大切にすべきことは、今後ますます増大するデジタル社会、ネットワーク社会でどんなサービス、どんなコンテンツが本当に必要で、どんなに役に立ち、私たちの生活を豊かで潤いのあるものにしてくれるかということではないでしょうか。そこにはユーザフレンドリー、ユーザビリティ、アクセシビリティ、ユニバーサルなどのキーワードが必須となりますが、そんなキーワードを踏まえて、デジタルコンテンツやソフトウェアにおける「グッドデザイン」とは何なのかを審査委員一同で論議を繰り返しながら審査は進めていきました。そして、その回答が今回の受賞結果そのものです。
ソフトウェアをはじめウェブやネットワークの様々なサービス、コンテンツの多くはアメリカを中心とした欧米で生まれています。そしてそのソフトウェアやサービスの良い、悪いも欧米的な視点で語られることが多い気がします。しかし、わが国も近年インターネット、ブロードバンド大国となり、よりグローバルな視点を持つネットワークサービス、コンテンツが増えることが期待されています。そうした時代の中でグッドデザイン賞が、良いサービス、良いコンテンツのひとつの基準になってほしいと強く願っています。
今年度の本ユニットは上述のようにデジタルメディア全体を包含しました。これまでのグッドデザイン賞ではこの領域の応募件数自体が少なく、また時代性のあるものや業界トップに位置付けられているものなどの応募があまりない状態でしたが、本年度は応募件数も増加し、また応募された内容もクオリティが高いものが多数あり、かつ領域も多岐にわたるコンテンツ、サービスが集まりました。特別賞を受賞されたものを見ていただければ誰にでもわかっていただけるかと思いますが、特にネットワークメディアの質は非常に高く、現在の日本を、そして世界を代表する受賞対象を選ぶことができ、このユニットのクオリティを、そしてグッドデザイン賞全体のクオリティさえも高めることができたと感じています。今年度本ユニットは全体で44件のグッドデザイン賞を選びました。特別賞だけでなくグッドデザイン賞を受賞された44件をもれなくご覧ください。いずれも素晴らしいグッドコンテンツ、グッドサービス、そしてグッドデザインであり、この結果を見ていただければ新ユニットを新設した目的もご理解いただけると思いますし、審査方針をどこに定めたのか、そして審査委員が今後この領域で何が重要と考えたのかのメッセージになっていることもご理解していただけることと思います。そして、受賞されたものものがGマークを付け世の中に行き交うことで、さらにこの領域でのデザインの重要性が高まるものと期待しています。(審査ユニット長 中谷 日出)