2007年度受賞結果の概要

2007年度審査委員/審査講評

2007年度グッドデザイン賞審査講評

A. 商品デザイン部門
A06:調理・食卓商品、家電等

柴田 文江

インダストリアルデザイナー


調理家電、生活家電、食卓 / 調理用品,これらは我々の日常を構成するモノです。日々の暮らしの中に溶け込むプロダクトだけに、デザインを実感する機会も多く、そのデザインが良くなることで人々の生活も豊かになると言っても過言ではありません。それゆえにデザインには生活者へのリアリティーのある提案が要求されます。本ユニットの対象商品にはユーザーの立場に立った提案ができているか否かがもっとも重要な審査基準となると考えました。他社品との差別化を目的としたデザインや売り場でのアピールのためのデザインなどは、本来これらのプロダクトにとって適切では無いものとし、審査段階ではそれらの手法が著しくユーザーの生活と住環境にそぐわないものは選定外としました。 調理家電、生活家電のカテゴリーには、マーケティングに偏りすぎた「売り手本位のデザイン」は少しづつではありますが減っているように感じました。デザインの目指すところが商品というカタチで実現しやすい環境が整いつつあるようにも見受けられ、全体的にデザインレベルが高まった印象を持つことができました。中でも金賞に輝いたサムスン電子株式会社の冷蔵庫「Side by side」は一般家庭用の機能を充分に満たし、成熟した商品でありながら、美しい佇まいと高品位なモノづくりにより新しい価値をカタチとして見せてくれたプロダクトです。デザインがもたらす豊かな暮らしを想像させ、家庭電化製品というイメージにとどまること無く、生活を構成するエレメントとしてのプロダクトのあり方を知らしめてくれたことが高い評価を得た理由だと思います。今後、日本製の家電にもそのような伸びやかで、プロダクトの可能性の広がりを感じさせるようなデザインを期待したいと思います。
食卓 / 調理用品のカテゴリーは成熟した商品群なので、それを使用するシーンに対してデザインがどのような効能をもたらすか、また新たに施されたデザインが有意義で必要性を感じるのかなども、審査段階で重視したポイントです。一例をあげると、株式会社クレハの「NEWクレラップ」は数年前から使いやすさの向上に向けてデザインをブラッシュアップし続けている商品です。一見するとデザインに変化を感じませんでしたが、既に完成度の高いものに対して、謙虚に改良を重ねる姿勢に日常のデザインの手本を見たような思いがしました。やはりデザインはそれが使われる役目に対して適切に施されるべきで、目先を変えるためだけの表層的な処理によるモデルチェンジの事例には、考えを改めていただく参考にしてほしいと思います。
エントリーされた商品はそれぞれにデザイナーや作り手の熱い思いを感じるものばかりでしたので、それに報いるために我々ができることは議論を重ねることでした。デザインという数値化できないものを人間がジャッジするのですから、幾度となく審査基準を確認しあい、その基準とは何かというイメージを共有することが重要でした。最後は審査委員自身が「本当にこれはグッドデザイン賞にふさわしいものだろうか」という自問自答をし、その結果に対して責任を果たしたという自負を持つことができたと思っています。「正しいデザインが評価される」という当たり前のメッセージを発信し、今後のものづくりとデザインの発展に貢献できるGマークを目指しました。(審査ユニット長 柴田 文江)