2007年度受賞結果の概要

2007年度審査委員/審査講評

2007年度グッドデザイン賞審査講評

A. 商品デザイン部門
A05:家庭用オーディオビジュアル機器等

渡辺 誠

インダストリアルデザイナー


昨年が「大型化」と「小型化」の年であったのに対して、本年度は「高級化」の年であったのではないだろうか。大きさとしては、相変わらず大きさを誇示するものはより大きく、小ささを誇示するものは「小型化」の路線をつき進んでいる。そしてそこに、「高級化」が加わっているように感じられた。もちろん、一言で高級化といっても、その方法は多種多様である。テレビのように画面を優先させるための目立たない高級化、サラウンドシステムのように存在感を与える高級化、携帯オーディオのような素材や材質による高級化、あげればきりがないものいであるが、全体に高級化や高級感を感じさせるものが多く、デザインのアピール・ポイントにも高級化がうたわれているものが数多く見られた。
なかでも、金賞にはならなかったが、松下電器産業株式会社の液晶プロジェクター(Panasonic TH-AE1000)は、高級な技術(高性能な技術)を、高級なデザインに包み込んだ例ではないだろうか。人間工学的な配慮と高級感をうまく融合させ、空間への調和をも併せ持ち、微細エッヂング加工も取り込んだデザインは、フルハイビジョンという高精細を可視化し、高級さを表現した日本のプロダクトならではの特徴を持った物となっている。中でも大型テレビは、最大の画面を誇るパナソニックのビエラ、シャープからは、まさに円熟という言葉がふさわしいアクオスが、そしてサムスンからはクリアブラックシリーズというように、各社が継続的に投入してきた製品の円熟期にあたる年であったのではないだろうかと思える。「高級な機能」を可視化した「高級なデザイン」というのが本年の特徴であったのではないだろうか。

また今年からは、乗用車の関連商品のカー・オーディオおよびカー・ナビゲーション・システムが本ユニットの対象になったが、これらの特徴は、この「高級化とは異なっており、「使いやすさ」や「わかりやすさ」の基準ができつつあり、いわゆる「よくできたインターフェイス・デザイン」のものが受賞している。なかでも、ソニーのナビゲーション(カー・ナビゲーションとは限定していない)(ANV-U2)は、クレードルとの接合を分かり易く確実なものにしたり、リリース後も凹凸なく接合部分を折りたたんで収納できる工夫がなされている一方で、小さな画面でありながらも、大きなGUIボタン、ボタンと背景、地図と操作ボタンの色のコントラストなど、操作のフローを良く考えたメニュー表示のプロセスなど、きめ細やかなインターフェィスデザインを実現しており、「使いやすさ」や「わかりやすさ」の両方をハード面、ソフト面で実現している。それ以外にも、複数の企業(トヨタ自動車株式会社 アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 株式会社デンソー 富士通テン株式会社 松下電器産業株式会社 パナソニックデザイン社)の共同で作成された、ハードディスクナビゲーションシステム(G-BOOK mX対応)(86100-20520)は、今までにない大きな日本語で表示されたわかりやすい左右のスイッチ、「スイッチ数の削減」と「分かり易い階層化」によりユーザーの操作における迷いを低減し、カーナビ本来の多機能化と操作性の向上の双方を両立させている。これらは、カー・オーディオおよびカー・ナビゲーション・システムに限ったことではなく、日本の工業デザインにおける「使いやすさ」や「わかりやすさ」に新たな答えを与えているものであり、次世代の日本らしさを担う製品を代表しているのではないかと思われる。

以上のように、一方では、「高級化」また一方では「使いやすさ」という異なる傾向ではあるが、世界のデザインにおいて日本のデザイン、あるいは日本が評価すべきポイントは何であるかを表した重要なキーワードであり、日本のインダストリアル・デザインの次世代の方向性を見出すことができたのかもしれない。 (審査ユニット長 渡辺 誠)