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2006年度グッドデザイン賞審査総評


2006年度グッドデザイン賞審査総評

 
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    B. 建築・環境デザイン部門

    B02:環境デザイン
     
    審査ユニット長  韓 亜由美

    アーバンスケープ・アーキテクト

     

この環境デザイン部門は,開設されてから今年で5年目と,歴史あるGマーク部門の数々の中では新参である。しかし,部門名の「環境」は21世紀という時代が共有する大きなキーワードでもあり,その対象となる領域はたいへん幅広く奥深い。

実際,今年の受賞作品を列挙してみると,金賞を受賞した2作品の,横浜市の35年にもおよぶ[都市デザイン]の取り組み,地域活性化の目玉として富山の[路面電車・ライトレール]をはじめとして,産官学が組んだ地域の[アートイベント],橋梁・ダムなど[土木構造物の景観デザイン],[造園],[リゾート施設],[大学キャンパス],[宅地/マンション開発]から,特別賞受賞の[トンネルの走行空間],[パイプラインの架設工法]まで。種類というより,そのスケールの多様性には特筆すべきものがある。

そして年々その多様性はふくらむ傾向にあり,まさに,ここに今の「環境」の公汎性と重要性があらわれているのではないかと実感させられるのである。興味深いのは,「環境」というからには空間性のあるものが対象となるのだけれど,ここでは単に造形としてのデザインがアピールされるのは少数派で,モノと空間・ヒトと空間,はいうまでもなく,ヒトとモノと空間,さらにそこへ時間軸やコミュニケーションという要素が加わる,というように空間を超えた複合的で広い,社会的関係性の中でデザインが語られる例が多くなっていることだ。もちろん,そういったアプローチの重要性について「環境部門」では積極的に評価してゆきたいと,審査員全員が一致した見解をもって審査にあたっている。応募者についても同様,今の社会を映すひとつの傾向がある。デザイナーや民間企業,という例のみならず,行政や国,教育機関,市民グループがノミネートすることが増えてきている。これも産業振興に直接に結びつくデザイン,というこれまで共有された価値観を超えて,もう少し先の何か,別な意味での豊かさが求められつつある,ということの兆しかもしれない。このあたりの事情は,「環境部門」だけの話ではないはずだ。

Gマークが発足して半世紀の現在,「デザイン」のジャンルも奥行きも当時と比較にならないほど飛躍的に拡大した。それでもなお,だからこそ,良識ある「グッドデザイン」を認定することの意味は決して小さくはないと考えている。一方で,この「Gマーク・デザインを通して社会を透かし見る」ことができるほど網羅的になった状況をふまえて,変化してくる応募内容に対し,より柔軟にわかりやすく評価ができるような枠組みの見直しも必要になってくるのではないだろうか。審査し,評価する側も,応募作品(=社会)と並走して進化してゆく,それがデザイン賞のデザインというものなのかもしれない。(審査ユニット長 韓亜由美)

 
 

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