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2006年度グッドデザイン賞審査総評


2006年度グッドデザイン賞審査総評

 
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    グッドデザイン賞審査委員長

     
    喜多 俊之

    デザイナー

     

グッドデザイン賞は,今年度50周年を迎えました。半世紀もの間,良いデザインを目指し多くの企業が努力を重ねて,より良い人々の日常の暮らしと,輸出立国・ものづくり日本の産業経済を実現させる役を担ってきました。市場に受け入れられる製品とは,人に優しいデザインとは,オリジナル製品とは,半世紀もの時間を費やして世界の人々の暮らしや生活文化,新しい技術開発に伴う新しいデザインのあり方を,確実に世界に発信し続けてきたのです。今,改めて自然と人類の共生のためにデザインの果たす役割は大変重要なものとして捉えられています。これからのデザインは,人々の生活や産業経済の発展に大きな役割を果たそうとしています。

2006年4月に開催されたミラノ・トリエンナーレでのグッドデザイン賞50周年記念展は,これまで国内中心であった日本のグッドデザイン賞を改めて世界に大きくアピールする機会になりました。見学に来た世界各国のジャーナリストを通じて,多くの海外メディアが大切なページを割いて報道しています。会場は,50年に及ぶGマークの代表製品の写真や実物,そして20社の代表企業の出展スペースが設けられ,連日予想を超える人々が訪れました。見学に来られた多くの分野の人々が,それぞれの近未来の姿を想像するに充分な手ごたえを感じたのではないでしょうか。使う側からのデザイン,製作する側からのデザイン,そして流通側からのデザイン,そしてもう一つ,地球環境という側からのデザイン。デザインということばには,これらのバランスを取る,ということが込められているからこそ,多くの国々の重要なテーマとして取り上げられることになったのです。知的産業,付加価値,地球環境,地域文化,ハイテクノロジー,ユニバーサルデザイン,人類社会の持つ様々な問題を解決するために,勇気と想像力を持って,未来へ,それぞれの分野でより良いバランスのとれたものづくりを目指してきた様子が,予想以上の評価を得る結果となったのです。

2006年,昨年に引き続き,外国からの審査委員を交えて選ばれた特別賞は,どれも世界に通用するオリジナル製品ばかりでした。半世紀前,多くの日本製品がデザインの模倣問題で外国から批判を浴びていたことからすると,この意識の変化は見事なものです。そして今年度は,外国からの参加製品が多く受賞したことも特筆すべきことです。アジアの国々の製品が,世界市場で大きな役割を担うまでに成長して,これまでの西洋社会を中心として生み出されたものづくりに,さらに東洋の文化や価値観が加えられ,人類社会の持つ多くの問題を解決する機会になれば素晴らしい。その潮流の中で,日本のグッドデザイン賞の50年の歩みは世界の人々に大きな光を与えるものとして捉えたいと思います。

 

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