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2006年度グッドデザイン賞審査総評


2006年度グッドデザイン賞審査総評

 
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    A. 商品デザイン部門

    A01:身のまわり、健康管理・美容、高齢者・ハンディキャプト関連商品
     
    審査ユニット長  國本桂史

    デザインディレクター/デザイナー

     

このユニットは,「身のまわり商品」と,これからの高齢化や生活の中に健康と美容を積極的に取り入れるといった傾向の中で必要とされてくる「健康管理・美容商品」に,「高齢者・ハンディキャップ関連商品」という三つの商品カテゴリーの審査ユニットである。

日々の人々の生活と,モノづくりと社会との今日的な関係,生活者の傾向とデザインのテーマとが見えてくる。「生活文化のデザイン・インデクス」であると言っても良いだろう。Gマーク制度がスタートして50年を迎えた2006年度の応募の傾向をみると,日常のちょっとした商品であっても,リアルな生活者への視点を持ち,物理的機能と心理的機能の両面に細やかな配慮のあるデザインが増えてきたことが感じられる。また,プロダクト製品を生み出す活動の中に,サスティナビリティへの配慮の高いデザインが見受けられたことも特徴である。

ロングライフやリサイクルという製品設計のハウ・ トゥーから,製造・使用・廃棄までのエネルギーを少なくするといった生産方法,さらには生活者の意識レベルでのサスティナブルデザインにまで,デザイン的配慮がされているものも見受けられた。これは,グッドデザイン賞(Gマーク)というものがアートに対するプライズではなく,インダストリーに対するアワードだという日本の社会と産業界の明確な姿勢であり,Gマークがそれを具現化する仕組みとして成り立っていることの明確なエビデンスであろう。

具体的な受賞例を見てみよう。体重体組成計は,体重を量りながら体脂肪率や,内臓脂肪レベル,骨格筋率,基礎代謝等が測定できるものであるが,日々高まる機能は,一般の生活者がごく普通に高いレベルの自己健康管理を望む傾向になってきているということである。乗馬フィットネス機器などもここ数年,機能的・理論的研究と商品展開が進められている。ここには抗加齢志向の新しいデザイン・ステージの期待が持てる。一般に元気がないとされる繊維産業にも新しい動きがある。老舗下着ブランドが体型補正機能をもった男性用下着に取り組み,ヒット商品となっていること,下請的メーカーが,ナノテクノロジーを活用した機能素材に日本の伝統色といったドメスティックな文化性を持ち込んだベビーウェアや大人向けのツアーウェアのブランドを立ち上げ,大手ポータルサイトとのコラボを行うなどにより高い関心を得ていること。他には,不幸にも脳卒中等の病気で下肢に麻痺が起こった高齢者等の生活をサポートするための器具に,これまでとはまったく異なるデザイン的な解決を持ち込んだ商品が提案されたことなど,注目すべき多くの事例があった。

元気な高齢者が多い社会,また若年層であっても体のメンテナンスや,いかに生きるかということに自己責任と関心の高まる社会を迎え,今後アンチエイジング,ライフケアなど医療技術を背景としたサービスは爆発的に拡大するであろう。

2006年の審査会終了後開催されたグッドデザイン・ プレゼンテーションに医師,ジャーナリスト,デザイナー,マーケティングの専門家が集まり「ライフ&メディカルデザインの幕開け」セッションが開催され,大きな関心を得たことは,日本のこれからの社会にサスティナビリティ(持続可能な社会)の実現,クリエイティビティ(たのしく豊かな創造性)と並び,このライフ&メディカル領域のデザインが果たす役割への期待が極めて高いことの証であったことを改めて強く感じさせてくれた。(審査ユニット長 國本桂史)

 
 

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