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2006年度グッドデザイン賞審査総評


2006年度グッドデザイン賞審査総評

 
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    A. 商品デザイン部門

    A07:家具、インテリア、住宅設備
     
    審査ユニット長  田中 一雄

    環境・プロダクトデザイナー

     

このユニットは,家具,インテリア,住宅設備等を対象としており日常生活空間を形成するデザイン領域である。グッドデザイン賞50周年となった本年は,昨年にひき続き厳しい審査の展開となった。最終的な二次審査通過率は32.4%であり,過年度であれば二次通過となった商品も,本年は不通過とせざるを得なかったものも少なくない。部門の総体的な印象としても,突出した価値を発揮しているものは少ない。当部門から金賞候補や特別賞候補としたものも,全体評価のなかで最終的には受賞に至らなかったことは残念であった。こうした結果の一因としては,家具やインテリアなどの商品は技術革新の影響を受けにくく,機能的に完成したものが多いことが考えられる。しかし,そうした制約のなかでも,発想の転換による「明日をひらくデザイン」の開発は可能なはずであり,来年度に期待をつなぎたい。

個々の具体的問題点としては大きく以下の三点が考えられる。一つは,成熟商品においてブレークスルーが見いだしにくいことである。例えば,椅子という古典的対象では,ただ単に良く出来ただけの商品でグッドデザインを勝ち取ることは困難になっている。こうしたことは家電領域でも同等であり,エアコンやインターホンなどの商品において,国内メーカーは,ほぼ全滅状態である。シンプルミニマムがデザインの基本的要因となる商品領域であるが,その中で突き抜けた「価値や質」の追求にチャレンジして頂きたいと思う。

二つ目は,機能的価値のみを訴求した商品の評価判断である。言うまでもなく,グッドデザイン賞は単なる造形意匠だけを評価するものではない。しかし一般的な技術的差異やコスト効果のみを訴求した商品では,マーケット価値は打ち出せても,グッドデザインとしての価値は持ちにくい。昨年大賞となった「痛くない注射針」ほどの価値変革を生み出さなくては,技術的観点からのグッドデザインは勝ち取れないだろう。こうした傾向は,建築金物や住宅設備系の商品に多く見られ,グッドデザイン賞の意味に対する周知が課題であることを感じさせられた。

三つ目は,装飾性に対する評価の問題である。家具や家庭用品の領域においては,クラフト的デザインの商品が応募されることも多い。また,カーテンレールなどのインテリア金物などでは,古典的意匠性を基本とした装飾的デザインの商品も見受けられる。こうした,趣味性の高いデザインも,市場としてはある種のマーケットを形成していることは事実である。しかし,グッドデザインの目指すものは「新しい価値の創造」であろう。この意味において,グッドデザインとして評価されない商品が少なからず存在したことも,今後の課題といえるだろう。

上記,三つの問題点は,グッドデザイン賞全体の課題としても共通することであるが,当ユニットにおいて,こうしたことが顕著に感じられたことは残念であった。ただし,こうした状況の中,キッチンにおける望ましい家電のあり方を示した松下電器産業(株)の「ビルトインオーブンレンジ」や,成熟市場のバスユニットにおける新しい日本のスタンダードを示した松下電工 (株) の「システムバスルームi-U」,マンションファサードに新しい景観を生み出した三協立山アルミ (株) の「集合住宅用アルミ手すり・パステルステージ」などは,金賞候補としての価値を十分に備えていた。来年度は,こうした商品をさらに凌ぐものが,数多く応募されることを願いたい。(審査ユニット長 田中一雄)

 
 

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