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2006年度グッドデザイン賞審査総評


2006年度グッドデザイン賞審査総評

 
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    A. 商品デザイン部門

    A02:日用品、ガーデニング、スポーツ・アウトドア、エンターテーメント・ホビー
     
    審査ユニット長  長濱 雅彦

    プロダクトデザイナー

     

“美しい日本”づくりに一見地味ながら貢献しているのが,このユニットであることを再認識させられた。ここに集まる商品の大半が流行りのデジタル商品でなくアナログ商品で,話題という情報価値の恩恵に預かることがほとんどないモノばかりながら,実は上質でオリジナリティある製品がこれまでも多くGマークを受賞している。ある意味,日本デザインを底辺から支えてきたジャンルと言っていい。

特に日用品の応募者の立場で考えてみると,毎日の生活に耐え得る製品を企画・デザインし,上市することは,つまりはその時々の『生活そのもの(家族のカタチ)』をつくり出すことであり,グローバリズムや画期的新技術といった,高飛車な眼差しだけでは不可能であることが分かる。考現学的発想(例えば秋葉原的視点も含む)から今の日本人を知ること,ユーザーの生活所作を観察することのみが,開発の道標になるわけだ。だから,横並び品が少ない。

現に,今年度このユニットでGマークを受賞した商品のエントリーシートを改めて見直してみると,「ユーザーのかかえている問題を高い次元で解決した」,「長く使えるデザインを行った」という意図の表明が多く見受けられた。この事実は,デザインユーザビリティーという視点が日本各地の中小企業まで浸透し,生活者の本音を知るという知的作業が着実に成果となって現れていることを物語っている。企業規模問わず,こうした目線の低い研究活動が,今の豊かな生活の背後に存在し,ひいては日本の活力になることを様々なリーダー層にも理解してもらいたい。そしてIT競争にのめり込むだけでなく,生活者の視点に立ったデザインというものにも,もっと目を向けてほしい,そんな思いが湧いてきた審査会であった。

最後になるがこのユニットから見事金賞に輝いた三洋電機 (株) の充電式ニッケル水素電池「eneloop」にも,高度なデザインユーザビリティーの視点が見て取れた。モッタイナイという標語が流行語になる時世,同社は「使い捨てない」というプリミティブなコンセプトを打ちたてる。既存のニッケル水素電池に比べ自己放電しにくく1,000回の繰り返し充電ができる画期的な乾電池は,そんな当たり前な目標を見い出したことが誕生のきっかけである。また,ブルーのグラデーションパッケージは新鮮で,機能優位を消費者に伝える役割を充分に果たすハイレベルなコミュニケーションデザインと言える。こうした生活インフラと呼べるジャンルにおいて,“進化”と同時に“話題”を創りだすことは奇跡に近い。大賞と比較しても全く遜色ない,斬新で総合的なデザイン提案であり,デザインパワーのダイナミズムを改めて感じさせてくれた。(審査ユニット長 長濱雅彦)

 
 

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