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2006年度グッドデザイン賞審査総評


2006年度グッドデザイン賞審査総評

 
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    A. 商品デザイン部門

    A06:調理・食卓商品、調理家電、生活家電
     
    審査ユニット長  和田 達也

    プロダクトデザイナー

     

デザインは時代の要求から生まれてくる。人々の生活,テクノロジーの革新,そして社会システムの変革や自然環境の変化などから,その時代を担うプロダクトが生まれてくる。

この調理・食卓商品,調理家電,生活家電のユニットは成熟商品が多い中,人々が日々作り上げてゆく生活文化に応えるために着実な革新をとげている分野である。こうしたユーザーの日常生活に根ざした使い勝手への提案がこのユニットの一番の基本であり,審査基準となっている。

金賞に輝いたオクソー・インターナショナルの大根おろしはユーザーの立場で使い勝手の研究,実験を重ね,低価格ながら手に馴染み,しっかりと固定できるスロープ状の側面形状を生み出し,大根の自重を利用して最後まで無理のない自然な削り心地を感じさせてくれる。 これはデザイナーがユーザーの新しい使い勝手を見いだし,提案したもので,その提案に対する強い思いがメーカーの開発姿勢への共感につながり,そしてユーザー自身の生活文化を作る工夫にもつながるという物語を生み出している例ではないかと思う。しかし選考にもれた商品の中には,競合他社との性能比較と差別化重視の視点,デザイナー自身の個性重視の視点,受賞歴のある商品と同じシリーズ商品という視点などが目立つモノが多かった。このような商品は,市場での位置づけの優位さを競う点ばかりが目につき,本来のユーザーの立場から離れてしまい,本当の狙いを訴えることができなくなってしまっている結果だと思われる。改めてこれからの応募商品に求める要望を整理して考えてみると,ユーザーとの間で生まれる,3つの「共感」という視点をもっていただきたい。

[1]使い勝手への提案から生まれる共感
[2]生活文化への貢献から生まれる共感
[3]開発姿勢の発信から生まれる共感

当たり前のことと思われるかもしれないが,当ユニットの審査方針はこの基本に立っている。韓国や東南アジア各国の,国を挙げてのデザイン政策やデザイナー育成運動(韓国のインターシップ制度など)は,この基本方針に近いものであり,すばらしいデザインの商品を生み出しつつある。今回もサムスン電子 (株) の日本市場向けの視点で作られた商品ラ インナップには,その意欲と物語性を感じる。改めてデザイン教育にたずさわる者としてデザイナー育成や,社会への発信に関する責任を痛感するところである。またメーカーにも,このGマークの主旨を理解し,自社のデザイン戦略の上に,このデザイン視点の位置づけを再確認していただき,デザインクオリティの向上に心がけていただければと強く願う。(審査ユニット長 和田達也)

 
 

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