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2006年度グッドデザイン賞審査総評


2006年度グッドデザイン賞審査総評

 
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    D. 新領域デザイン部門

     
    審査ユニット長  日高 一樹

    デザインと知的財産権に関するコンサルティング

     

本年度,新領域デザイン部門では審査対象76件中49件が受賞し,さらにこれら受賞対象の中から金賞3件,エコロジーデザイン賞,ユニバーサルデザイン賞,中小企業庁長官特別賞各1件,審査委員長特別賞1件が選ばれた。全体の選定率が35%程度だったのに対し本部門は64%と高い選定率を示し,さらに金賞など例年以上に多くの特別賞を受賞した。このことは喜ばしいことであるが,申請内容全般を見ると昨年度に続き既成コンテンツの実施デザインが多数で,結果的に完成度が上がり,選定率が高くなったものである。一方先端知見を表出するコンテンツ提示型の申請は昨年同様少ない傾向が続いている。

大賞の最終選考に残った金賞の「ロボットスーツ HAL-5」は,日本のロボット産業の将来性を完成度高く提示してくれた。また同分野の中小企業庁長官特別賞「自律運行型除雪ロボット」は,高齢化社会の課題を解決するばかりでなく利雪の観点も提案した。金賞の「大手町カフェ」はバイオマス,ゼロエミッション,サステナブル,憩いなどの要素を高度に融合したコミュニティを実現し,エコロジーデザイン賞の「アイミュレットLA」は無電源光音声情報端末技術と竹外装によりデザインを通して環境問題に対する一貫性を提示した。金賞の「WILLCOM SIM STYLE」は通信モジュールの提供による通信と異業種の融合を促進する新たなビジネスモデル。次世代のライフスタイルや社会基盤の拡充に貢献することが期待された。審査委員長特別賞の「サムソン・デザインメンバーシップ・プログラム」は10年以上の継続的事業で人材育成,人的ネットワークの構築などを通し,同社のブランディングに貢献。その戦略性と実績が評価された。これら本部門の代表的なコンテンツは既に成長・展開期にある。その一部は本部門からの卒業も間近であることが予見される。

一方,ユニバーサルデザイン賞の「手術シミュレータ」は血管内カテーテル手術のための先端技術を活用した医療訓練システム。技術の人間化を導きグローバルな展開が期待される。一例であるが,このような新たなコンテンツがこれから多数申請されることが望まれる。

本部門は先端技術を活用したデザイン,新たな社会的価値を創出するデザイン,社会的課題を解決するデザイン,デザインによる商品開発手法やブランディングなどのコンセプトやコンテンツを積極的に評価する。それも創出,展開,実施の各段階を見極めながら将来性や期待値を考慮する。後押しの必要性も配慮する。先端技術を人に近づけ,人が使いやすく,豊かな生活を営むための商品開発,企業の社会貢献活動,環境・高齢化社会・教育など社会的問題に関する解決策(社会的価値創出),新たなビジネスモデルの創出など課題は溢れている。これら課題に対して人間的アプローチによる課題解決手法が新領域のデザインである。本部門は次世代の新たな提示を待っている。(審査ユニット長 日高一樹)

 
 

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