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2006年度グッドデザイン賞審査総評


2006年度グッドデザイン賞審査総評

 
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    C. コミュニケーションデザイン部門

     
    審査ユニット長  永井 一史

    アートディレクター

     

コミュニケーションデザイン部門は,モノのデザインから離れて自由度が高いため,デザインという方法論が,世の中に徐々に広がっていることを実感できるカテゴリーである。
“既存の商品やサービス”×デザイン=( ? )という式を世の中のあらゆることに応用してみると,もっと世の中が良くなったり,楽しくなったり,美しくなったりする。そんな可能性を改めて感じた審査だった。特に,「九州大学病院2期病棟 小児医療センター」の仕事では,それを強く感じた。病院とデザインが結びついたことによって,新しい病院のあり方を提示したユニークな試みだ。このような一見,デザインとは縁遠い医療の場でも,デザインが患者の気持ちを和らげ,様々な課題を解決する大きな力になっている。他の病院からの視察も沢山あるらしいが,この試みが,医療の場で新しい刺激になって,また新たなデザインにつながっていってほしいと思う。
「ふろしきを使ったレジ袋削減運動」では,日本の伝統的な生活文化を見直すことによって,環境負荷の軽減に対して新たな視点を持ち込んだ。これが一過性のものではなく,ムーブメントや新しい習慣を触発する可能性を持ったアイデアであるという点でも,環境と人との優れたコミュニケーション・デザインだと思った。

現代のメディア環境の変化の中で,様々な新しい試みが生まれている。携帯での会話を視覚化する「コミュニケーションアプリ」は,話した瞬間に消えていってしまう会話を,キャラクターを通じて可視化することによって,会話の余韻を楽しむという全く新しいコミュニケーションを創出させた。また,WEBに関しては例年,応募も多く,過去には高い評価を得た作品もあったのだが,今年は応募が幾つかあったものの,入賞はゼロという結果になってしまった。現代の生活におけるWEBの重要性を考えると,さらに意欲的な作品の応募を期待したい。

パッケージは今年も優れたものが多かった。全体の印象として,単なる造形性を競うのではなく,その商品らしさ,企業らしさをどうカタチに落とし込むかという視点でデザインされていた。例えば「マジョリカ マジョルカ フレッシュパック」は,毎日使う小さなパックのデザインに,遊びを持ち込むことによって,ワクワクした楽しい独自の世界観をカタチにしていた。審査の中では,環境が大きな問題になっている時代に,パッケージの過剰包装や,デザイン過多に対しては,厳しい意見が出ていた。デザインというキーワードが,氾濫している今こそ,デザイナーは,何をデザインし,何をデザインしないのかという視点が重要になっていくだろう。(審査ユニット長 永井一史)

 
 

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