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審査講評

ユニット3:生活のデザイン2 食卓・調理用品/家電機器
朝倉 重徳 インダストリアルデザイナー

この審査ユニットでは生活の基本に関わる道具として、家電機器と食卓、調理用品が対象となった。
白物家電は、三種の神器といわれた時代から基本機能に大きな変化はないものの、改良の積み重ねで今やあらゆる面で成熟した機器になっている。近年の開発では、省エネや節水など外観に現れにくいところでの技術革新が進み、市場ではいかに環境に配慮しているかが競合との争点になっている。結果、一時期のように外観で付加機能をアピールするような過剰表現をすることもなくなり、かたちを決める要因がメーカーや流通都合の差別化のための華飾からユーザー主体に修正されてきたと見ることができる。この傾向は環境問題がデザインにもたらす効果の一つとして評価できるだろう。そして、今年審査した家電の中では特に冷蔵庫とエアコンで顕著に感じられた。

このユニットのもう一つの審査対象分野は食卓、調理用品だ。歴史は人類のそれと変わらないといっても過言でなく、何百年もかけて収斂してきた定番の製品が存在するなかで新製品の評価は難しい。今年は、シリコン製品の多くに素材の特性を活かした新しい提案がされていたが、日々の食卓や調理用品の道具としては必ずしも一定のレベルに達するものばかりとはいえなかった。素材にしても用途にしてもまだ実験段階という印象が強かったが、試行錯誤は新たな定番の誕生には必要な段階であり、今後が期待される。