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審査講評

ユニット4:すまいのデザイン1 家具・インテリア用品/住宅設備機器
山本 秀夫 プロダクトデザイナー

このユニットの製品には、優れた機能を提供すると同時に住空間の良き構成員であることが求められる。生活者は実に多くの機能製品に支えられており、機能の分だけ空間は騒々しい。デザインの役割の一つはこれらが同じ空間で静かに共存できるよう調整することにある。審査では製品が提供する恩恵とともに製品が生み出すであろう空間の質を評価した。
耐震・免震構造材、堅牢な大規模建築用の屋根材、コージェネレーションシステム、太陽光パネルなど、安心と持続可能性に取り組んだ製品は、いずれも独自の答えを掲げており注目を集めた。開発者の強い意気込みが感じられる。
設備機器のなかに、便利で親切な機能を満載した国内向け製品と、基本機能に絞ったアジア市場向けのシンプルな製品を比較できるものがあった。国内向け製品は情報とデザインの整理が追いついていない。かえって機能を絞ったものが道具として明解であり頼もしく見える。
一方、実直に作り込まれた家具や、素材や構造の刷新にまで踏み込み製品の長寿命化に取り組んだ住設機器、質感を追求した内外装材に逸品が多かった。家具金物や建築金物などのいわゆる機能部品と呼ばれるものにもデザインの思想が根付いてきたことは喜ばしい。
我々は震災以降安心して暮らすための方法を模索している。非常事態は未だ解除されていない。いざという時のことを心にとどめながら暮らさざるを得なくなった。今後さらに安心と持続可能性の様々な解釈が製品として住空間に入ってくるはずである。デザインの貢献を期待したい。