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審査講評

ユニット2:生活のデザイン1 雑貨・生活用品
澄川 伸一 プロダクトデザイナー

東日本大震災というとてつもないダメージを受けた現在で、この日用品分野の新商品に関しても、はっきりとその震災の影響を感じ取ることができた。今までとは何かが大きく違っている。審査まっただ中の今年の夏は、全国的に「節電」がうたわれ、個人から企業までがあらゆる工夫と努力で乗り切った。節電の中でもLED電球は代表的なアイテムの一つであるのだが、機能が今までのランプからLEDに切り替わっても、フィラメントの表現から蛍光灯にいたるまで、LEDだよと言われなければわからないほど外観は以前と同じなのである。画期的な新商品であるにも関わらず、形で新規性を表現することなく、機能的には大幅な節電対策と製品の長寿命が実現され、部品交換などの手間もなくなっている。LED電球に代表されるこのような「静かな置き換え」の傾向がいろいろな商品に見受けられた。

懐中電灯のデザインが急速にレベルアップしていることにも驚かされた。ここにきてその重要性が再認識されているのであろう。中には、通常はランタンとして常夜灯の役割をしながら、それを手に取った瞬間に懐中電灯になるというものもあった。このユニットでは、他にも文房具や、食品保存容器、無接点の充電器など身の回りで必要不可欠なアイテムばかりであったのだが例えば、水が運べる風呂敷など、「今までとはなにも変わらないようなのだが、実は緊急時にはこんな使い方もできる。」といった優れたデザインを多く見ることができた。今年はデザインとして表層的な要素よりも道具としての可能性にややウエイトを置いた審査とした。