個別部門の審査内容についてはそれぞれの審査委員の報告に譲るとして、ここでは大賞審査を中心に報告してみたい。
(1)水着「ファーストスキン」
(2)浴室ユニット「ユニリッチ」
(3)乗用車「シビック」
(4)スツール「8110HZ,GZ」
(5)コンピューテッドラジオグラフィー装置「コダックCR800システム」
(6)風力発電機「アウラ500」
(7)手話アニメーションソフト「マイムハンド?」
(8)A-POC(エイポック)
の計8点が大賞候補として公開審査の対象となった。だが、今年度の審査上の難題は、すべてが甲乙つけ難いうえに、同じ評価基準では比べようがないという点に特色があった。字数の関係で個別アイテムについて詳述できないのは残念だが(GOOD DESIGN AWARD NEWS No.010 掲載:MOTOO'S VOICE 第10回・第11回参照)、6人の大賞審査委員がこの中から最終的に大賞に推薦したアイテムは3点。その内訳は上記の(1)2票 (7)1票 (8)3票と割れ、最終的に(8)A-POCが大賞に選ばれた。私個人としてはこの最終選択は、ここ4年程の大賞受賞がそうであるように、Gマーク大賞受賞を次世代デザインの鍵に、そして新しいデザイン分野の明示にというポリシーの継承として適切であったと考えている。
A-POCは、顧客参加、生産から販売までの垂直統合、多様な顧客対応といったデザインのトータル革命と、個別対応と量産成果という二律背反する条件を満たす生産革命、この両面において評価すべきものをもっている。アパレル産業の国際競争において、わが国独自の優れた手段となりうるだろう。ただし、現段階でのA-POCは、上記すべてのプロセスの完成度が今一歩であり、今後シナジー的に事業デザインがうまく運んだ場合という但し書きがつく。その意味で、A-POCへの大賞贈賞という応援歌は、大きな希望への第一歩として意義深いと考えた。