ファミリーユース商品部門
蓮見 孝 筑波大学 教授	グループ4[乗用車等]	ファミリーユース商品部門 グループ4 グループ長

審査概要

グループ4の応募商品は、主に乗用車と自動車関連部品・アクセサリー等である。本年度は審査委員推薦も含め50件の応募があったが、昨年度と比べると乗用車の応募数の減少が目立つ。
乗用車関連商品は、生活者の商品知識が深くデザインへの関心も高い分野なので、特に生活者のデザイン意識を一層高い方向にプロデュースしていくために、グループ4独自に複数軸の審査基準(たとえば主流性、エポック性、デザインのインパクト性、ディテールの秀逸性等)を考え、3人の審査委員で共有することにした。
もちろんあらゆる軸において優れている商品が望ましいのは当然だが、一つだけでも際立った特質があれば、前向きに評価するようにした。結果として選にもれた商品には、どの軸においても特筆すべきグッドデザイン性が見出せなかったものが多い。ただそのなかには、特にウェブで行う1次審査において、商品の特徴や秀でた点を明示する説明が弱かったために、選から外さざるを得なかった応募商品もあった。応募書類の作成にあたっては、写真以外に略図や構造図などを添付するなど、説明や表現の仕方に十二分に留意していただきたい。

金賞候補の選出

2日間に渡る2次審査では、充分な時間をかけて1点1点の商品を細部に至るまで観察し、活発な論議を行いながら評価した。特に、乗用車は視認性や運転フィーリングなども重要なデザイン要素と考えられるので、必要に応じて外光の元で試乗を行い、万全の審査を期した。また発表前の乗用車や今年から法制化されたチャイルドシートについては、審査委員の知識を充分チャージするために、応募企業の担当者による個別プレゼンテーションを依頼するようにした。
以上の審査の結果、今年度は19件の商品を合格とした。その合格率は38%で、乗用車だけに限ると58%となる。金賞候補の選出では、発表発売前の応募であるホンダ・シビックと、一段と洗練度と魅力を増したボルボV70が挙げられた。
特にホンダ・シビックは、コンパクトなボディにも関わらず、オデッセイなみの室内スペースを確保するとともに、前後席間で楽にウォークスルーができるフルフラットフロアを採用するなど、カーデザインの基本であるパッケージング・レイアウトにおいて、「マン・マキシマム、メカ・ミニマム」の考え方をさらに発展させ、バランスのとれた素直なかたちに表現している。フラットフロアは過去に前例がないわけではないが、安全性能や環境適応性が厳しく求められるこの時代にあって、あえてネガティブな要素になりがちな難しい課題に挑戦し、見事に実現させた姿勢を高く評価した。際立つ低燃費とともに、これからのミドルスモールクラスの乗用車の新基準を社会に提示する優れた商品といえる。

年度テーマ賞について

2000年4月に装着が法制化されたチャイルドシートについては、今回のGマークを契機に、消費者がより優れた商品を選択するためのデザイン品質基準を示すという目的から、審査委員が事前に調査を行い、応募された4点のチャイルドシートに加えて、とくに優れていると思われる4点を推薦し、そのすべての商品について応募者にプレゼンテーションを依頼して、より客観的な評価をめざした。
その結果、BMWのベビーシート、チャイルドシートを最も優れている商品として選び、法制化のタイミングをとらえて年度テーマ賞を授与するよう提案することにした。他の商品が専門メーカーによって開発されているのに対して、一般シートと同じように自動車会社が責任をもって開発しようとしている点に着目した。
社員をモニターとして総動員し、そのモニタリングの結果を子細に分析し、完璧な安全性や使い勝手のよさ、確実性を実現しようとしたもので、秀逸な機能性に加えスタイリングへのこだわりも高い、優れたチャイルドシートである。今後のチャイルドシートの普及を考える時、単に法に対応するためのがまん商品としてとらえずに開発され、生活の質を高めてくれる魅力的なリーディング・デザインとして、この製品の果たす役割は大きいはずである。

今後の課題

チャイルドシート以外の自動車関連部品・アクセサリーについては、残念ながら金賞や特別賞に推薦する商品は見当たらなかった。自動車本体のデザインの完成度の高まりと比較すると、特に細部における配慮や質感が不十分な商品も目についた。自動車の魅力が一層引き立つような優れた部品・アクセサリーの応募を期待したい。