ファミリーユース商品部門
芦原 太郎 芦原太郎建築事務所 代表取締役	グループ3[住宅・住宅設備]	ファミリーユース商品部門 グループ3 グループ長

審査概要

このグループの審査対象品は、79社188点であり、34.57%にあたる32社65点が合格となった。
応募商品は、住宅に関わる建材、部品、設備が主なものである。この部門の応募商品は、近年あまり変化が見られず、そのバラエティも多いとは言えないように感じられた。あっと驚くような新しい機能を持った商品や、何か次なる時代を示唆してくるような、新しいデザインもあまり見つけられなかったことは残念であった。工業化住宅も例年応募があるが、近年どこまでが工業化住宅であるのかといった境目をはっきりさせることが難しくなり、2×4や在来工法に近い物も含まれてきている。
さらに、今年は初めて分譲マンションの応募があったが、これは大変歓迎すべきである。今後こうした応募を増やすためにも、工業化住宅という枠ではなく、商品住宅と考えた方がわかりやすいと思われる。今後ハウスメーカーやマンションメーカーの商品としての住宅の応募がより多くなってくれば、住宅の購入を考えている人々にとってGマークは選択の指標としても大いに役立つことになるだろう。

デザインの評価

評価は、3つの階層から構成されている審査基準(良いデザインであるか、優れたデザインであるか、未来を開くデザインであるか)に基づき行った。特にデザイン、生活、産業、社会といった観点から個々の商品を読み取ることを心がけた。
デザインに求められるものも、現在では多様化してきている。従来からのいわゆる「デザイン」として、その物自身の造形や完成度が優れているかどうかといったことのみならず、生活者の観点からも、さまざまな生活のシーンにうまく当てはまり、機能していくものである必要がある。また、その商品がユーザーにとって満足できるものであると同時に、産業界や社会にもある意味をもって役立つものであることが望まれている。
松下電器産業のシステムバス「ユニリッチ」は、いわゆるユニットバスの「狭い」「安っぽい」といったイメージを脱して、より快適でくつろげる浴室を目指したシステムバスである。
床、暖房、浴室乾燥機、座って洗えるシャワー、手摺りや床面バリアフリー、間接照明など、さまざまな要素が統合された完成度の高いシステムになっている。老人や身障者への配慮が、ユニバーサルデザインとしてごく自然に処理されている。広い変型の浴槽や座椅子を見ると、3世代の色々な組み合わせで、家族の日常的なさりげないコミュニケーションの姿が目に浮かんでくるようである。
家族関係の在りかたがさまざまな社会問題を起こしている今、この部門としては、家族の良好なコミュニケーションに寄与するデザインを高く評価したい。こうした商品は、世界中どこにもなく、日本独自の風呂好き文化を現代に継承した次世代スタンダードと言えるシステムバスである。
テクニカルアプローチとしては、申し分ないと言えそうだが、21世紀の風呂文化を担おうとすれば、多くの日本人の感性に訴えかけるような造形や材質に、今後もう一歩工夫を望みたい。

今後の課題

工業化住宅は、性能の向上が伺え、バリアフリーやエコロジーへの配慮など、さまざまな工夫や改善がなされている。しかし、間取りや、西欧風な外観に微妙な定番スタイルが認められる。それは、戦後の高度成長期に物の豊かさを追求しながら目指した、モダンリビングへの幻想の枠組みの中での住宅である。果たして、現実に快適で幸せな家族の生活に寄与していけるのだろうかと考えさせられる。
住宅設備や部品においても、こうした住宅の既存の枠組みのマーケットに向けた商品作りが行われているようだ。
社会は今、大きく変わりつつある。物やお金にとらわれることなく、自ら主体的に生きる豊かさを生活者は求め始めている。住宅も商品として与えられるものではなく、自らが主体的に関与し、生活者と共にライフスタイルを創造するものであって欲しい。生活者、デザイナー、企業が共有できる、次なる時代のライフスタイルが求められている。そのためには、企業が提案の姿勢をもって、商品を通じて生活者の主体性や創造性を誘発することが大切である。
企業側の独りよがりにならないためには、生活者参加型の商品作りへのチャレンジが必要となってくるであろう。その時、消費者は、商品を1円でも安く買うことに奔走し、生産者責任を一方的に厳しく追及するといった姿勢に陥るのではなく、賢い生活者が主体的に関わるライフスタイル作りのパートナーとして、企業や商品を受けとめてくれることを期待したい。