ファミリーユース商品部門
川上 元美 (有)川上デザインルーム 代表	グループ2[家具・インテリア]	ファミリーユース商品部門 グループ2 グループ長

審査概要

民営化され3度目のGマーク審査に参加した。今回初めて、ファミリーユース商品部門、グループ2:家具、インテリアのカテゴリーの審査を担当した。以前から、このセクションの応募商品を審査会場で眺めてはいたが、今日のわが国のインテリア産業市場で一般的に扱われている商品と比較して、一部を除いてかなりレベルの低いもの、トレンドとして遅れているものが応募されている様子に、少々違和感を感じていた。
Gマークの主なる役割は、生活の基本を支えている領域のクオリティーを高め、快適性の追求や新規性、提案性を含む生活環境の充実化を図ることである。一昨年、新しい試みの一環として家具の地場産業を含め、今まであまり興味の持たれなかった地域に勧誘をかけ、地場のものの掘り起こしを遂行し、北海道、特に、旭川周辺で集められた商品の予備選定に立ち会ったことがあった。このような作業から優れたものを見つけ出すことができ、応募された中から、たまたま、金賞が選出されたといった経緯がある。
今年も、それが礎になって、積極的に委員が推薦して行く制度が設けられ、この部門の活性化を図るためにも、審査委員の視点でGマークに適したものを積極的に捜しまわろうと、キャラバン隊を組んで都内の該当ショールームへ出向く作業も行った。
家具に関しては圧倒的に輸入品に優れたものが多いため、デザインは国内外を問わないが、国内メーカーが企画、製作をしたものを対象に推薦しようとするが、特に目にとまるものは残念ながら少なく、最終的に推薦候補とした中から10数点の応募を得た。
また、もう一つの方法が考案された。それはGマークの新たなる地平を築くために特に若手デザイナーにスポットを当てるもので、彼らの手掛けている最近の家具や商品を選出し、応募へのアプローチを試みたが、Gマークへの興味が少ないのか、今回の応募には至らなかった。近年、生活者のインテリアに対する興味が深まっている中へ、Gマークが生活者へさらにデザインを訴求していくためには、このジャンルの充実化は必須であろう。その主旨をより適確に伝えて、広くサブ・カルチャー、カウンター・カルチャーの領域からも、日常良品を選択していくような革新が必要とされる。

審査経緯

応募・審査の電子化、オンライン化に伴い、本年度からWebによる1次審査が進められた。38社、79点の応募をみたが、例年のごとく低調な内容であった。また、CD-ROMやWebによる審査は今一つ画像データの情報量が少なく、多くのものが2次審査にまわり実物での審査を余儀なくされた。この方法はIT化を見据えた導入であるが、本格稼動には今少し時間が掛かるように思う。
2次審査では、前述したように街のショップ巡りと手持ちの資料等による審査委員の推薦に対応してくれた推薦応募の製品が加わり、内容の水準はかなり引きあげられた。最終的には38点がGマーク受賞となり、合格率は44%となった。
審査過程で意見交換された結果、顕著に浮かび上がってきた点は、時代の要請だと思われるが、応募商品の多くに熟成化に向けた地道な改良、変更の痕跡が見られたことである。その一方で、コストダウンのための中途半端な材料や技術の選択が目についた。ローコストで日常の中に息づくものにも、それなりの表現や解決策があるはずである。また、新しいライフスタイルを喚起するものが少なかったことも残念であった。
毎年ベッドの応募が多く、性能の多少の差異はあれ、価格に見合う機能は然るべきレベルに達している。だが、ベッドパッドやカバー等でコーディネーションされた寝室空間を、どのように居心地良く演出できるかといったソフト面での配慮に関しては、「今日のベッドとはどうあるべきか」という問いの適確な答えは得られず、概念的、表層的スタイルの踏襲の多さが目についた。むしろ高額商品ではあるが、韓国メーカーからの応募商品に目を引くものがあった。
今年度の金賞には、アルフレックス・ジャパンの収納家具「COMPOSER ALUMINA」が選出された。このメーカーが一貫して追求し熟成してきたボックスタイプの収納家具である。シンプルな表情と構造や細部まで行き届いたクオリティーを持ち、ユーザーのさまざまな生活シーンにフィットできるフレキシブルな家具で、リーディング商品として、業界に大きな影響を与えている。
中小企業庁長官特別賞は、候補商品が多い中から、トスカの「TABLE & DESK SYSTEM」が選ばれた。アルミ押し出し成形材を主体にシステム化された、豊富なバリエーションを形成するユーザー・カスタマイズ型の商品である。

今後の課題

産業へのデザインの導入が経済の追求から社会的、文化的価値の創造として、強く求められて久しい。特に、このカテゴリーは価値観の多様化の進行が顕著であり、狭義な基準での評価軸で審査するのは難しさを伴う。Gマークが混迷の続くわが国のライフスタイルの状況に指針を与える運動として、生活により潤いを与え、「デザイン」がその橋渡しになるためにも、狭い範囲からの応募のみでなく、多くの賛同者とともに多くの参加者を得て、より広範囲からの情報の集積が必要である。
それにはこの事業の目的とする、Gマーク商品の積極的な商材化やデザインインフラの活性化を遂行し、さまざまな意味で魅力ある事業として育てていく必要がある。特にこのグループ2では新しい仕掛けを考える必要があろう。