パーソナルユース商品部門
黒川 玲 (株)黒川玲建築設計事務所 代表取締役	グループ1[身体・スポーツ・趣味]	パーソナルユース商品部門 部門長

幅広い商品ジャンル、そして一番身近なモノの集合

パーソナルユース商品部門は、部門の再編が実施された昨年と同様、「グループ1:身体・スポーツ・趣味」と「グループ2:パーソナルメディア」の2グループで、それぞれ5名の審査委員によって審査が行われた。審査対象総数は全体で669点(グループ1:395点、グループ2:274点)であり、ファミリーユース商品部門(725点)に次いで応募点数の多い部門であった。
この部門の特性を一言で言えば、極めて幅広く、バラエティーに富んだ商品ジャンルといえる。グループ1では、化粧品から棺までの範囲の幅があり、その間にランジェリーや水着、時計・眼鏡、楽器、スポーツ用品、車椅子、自転車、バイクなどがある。グループ2では携帯電話、携帯情報端末、パーソナル・コンピュータ、システムコンポ、デジタルカメラなどが対象となる。いわば個人が使用するモノなら何でも......の感があるが、個人が使用するモノとはいっても、時間軸的にも空間軸的にも、また心理軸的にも使用状況が異なり、それぞれの状況に見合った価値の優先順位があり、輻輳的な審査が要求される。
また、同一ジャンル商品の競合参加も数多く(例えば眼鏡、携帯電話など)、Gマークの審査基準だけでは到底審査しきれない難しさを感じた。
しかし視点を変えるなら、私たちが日常的に使用する一番身近な「多様なモノ=多様な使用状況=多様な機能」がこの部門の特性であり、この多様なモノの質が、より良く、美しく、使いやすくなっていくことが、生活の質を高めることになるのであり、その意味から言えば、難儀ではあっても審査しがいのある部門だと言える。
最終的に、この部門全体の合格率は46.2%(グループ1:37.7%、グループ2:58.4%)となり、商品部門の平均43.0%を上回る結果となった。
また今年度は、1次審査において昨年の書類審査からオンライン審査へと審査方法の改良が図られたが、システム設計については部門ごとに変えるなど、今後に向けて検討の余地があると思われた。

金賞について

グループ1からは「競技者用水着」が、グループ2からは「コンピュータマイクロスコープ」「ヘッドホン」「PHSモデムカード」の3点、合計4点が公開による金賞審査会にて選ばれた。
以上の4点は、ある意味で2000年という今日性を体現しているように思える。競技用水着は、まさに今年開催されたシドニー・オリンピックに向けて開発されたもので、0.01秒差を競い合うためには水中での抵抗をいかに減らすかが最大の課題であり、その課題を素材開発とカッティング技術により、ものの見事に解決している。
また、グループ2の3点は、見る・聴く・データ送信という、20世紀が行き着いた「メディア」そのものであり、使用者の使用感覚や皮膚感覚(指や目や耳)をも納得させ、喜びを与える完成度の高いデザインである。

「商品魅力」があるか

この部門の応募商品は、一部のプロ仕様のものを除けばほとんど日常使用のモノである。ということは、街(店)で一番多く見かける商品であり、言わば街(店)の情景をつくり出している商品ともいえよう。
各商品は、当然のことながらGマークの審査基準に則し審査されるわけだが、その上で「商品魅力」があるかどうかが重要な視点となるのではないだろうか。商品コンセプトを基に機能や安全性、問題解決力、完成度、価格など、さまざまな審査ポイントをクリアしたとしても、ある1人の生活者(使い手・買い手)を説得するだけの「魅力」がなければ、「パーソナルユース」=個人の(自分の)モノ、にはならないだろう。
街(店)の情景としての商品、身につけ手に持ち、自分の部屋に置き、ほとんど自分と一体化する商品。だからこそ「魅力を創り出す」、そして「魅力を感じ取る」、この2方向性がデザイナーと生活者双方の生活文化を高めていく大きな力(デザインの役割)になるのではないだろうか。
今年度金賞を受賞した4点には、この「商品魅力」が備わっていると考えている。