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2010年度受賞結果の概要

審査講評

グッドデザイン・フロンティアデザイン賞
松井 龍哉 ロボットデザイナー

昨年より新設された「フロンティアデザイン賞」は「未来のグッドデザイン賞」ひいては「デザインの未来」を見据える上で重要な役割を担っている。
ここで言うデザインとは、地球上様々な環境で暮す人々の「生活の質」が向上していくために考えられた美意識ある構成を指す。デザインは物単体で評価は出来ない。むしろ、対象となるデザインが出来た背景をもとに、その物や事が創られた事で生まれる価値創出に意味があると考えている。未来の想像は現実社会の複雑な状況から始めなくてはならない。その想像の始まりから具体的な問題解決方法を見据え構造化したときにデザインが生まれる。
この「フロンティアデザイン賞」では、今はまだ具体的な製品やシステムとなっていなかったり、特定のビジョンの達成に向けた途上にあるなど、将来的に生活を変えるような新たな価値を社会流通させる「美しい構想」を募っている。そして、時間がかかっても最終的には、その構想が具体的な意味を持ち、産業を生み出し、社会と人々にとって利得ある関係を築くことが望ましい。その意味で、フロンティアデザイン賞の審査評価基準のひとつに産業展開への意思があるかを尊重することにした。さらに、今回は「構想が投資対象になり得るか?」という視点を入れてみた。科学技術の論文ではなく、具体的に実験が成されている案件や構造的な力学が解けている造作物(案であっても)を中心に審査した。“100年後の社会に向けている”では審査が無責任になるので、次世代ビジネスの観点で考え10年から20年後の実用化を視野に入れた投資対象案であるかをひとつの評価基準に設定した。様々な企業のプロトタイプや大学や研究機関の研究が揃ったが、この「10年から20年後の産業転換への投資対象」というひとつの基準設定が、方向性をつくりだし結果的にはグッドデザイン賞の思想に見合う、フロンティアデザイン賞の審査結果になったと思っている。来年以降も人類の生活の質を向上させる、美しき未来を想起させる構想がもっともっと出て来てほしいと願っている。