GDA2002 WINNERS 審査委員・審査講評 賞の構成 大賞 エコロジー賞 中小企業庁長官賞 ロングライフ賞
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審査講評
商品デザイン部門 審査ユニット7
ユニット長 真鍋恒博

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エアコンのデザインの変化
この審査ユニットは、住宅設備機器やインテリア、エクステリア材料・部品などを対象としているが、いずれも単品としてのデザインというより、建物に取り付けられた状態という、本来の使われ方を前提として考えるべきものである。昨年はエアコンがすべて受賞せずという結果になったが、自己主張が強くインテリアへの調和が考えられていないデザインでは本末転倒という、審査委員会からの切実なメッセージであった。こういう視点は、この審査ユニットの殆どの製品に当てはまる。
昨年の審査委員会の意志が伝わったのかどうか、エアコンのデザイン傾向は確かに変化しつつある。和室垂壁の寸法制約内で静穏と熱交換面積を確保するためには、どうしても厚型になって室内空間に出っ張った形になってしまうことや、フィルター脱着機構から中央で二分するデザインにしたくなるのも一理はあるが、やはり目立ちすぎは避けたい。今年度は、同じ傾向の中でも空間的な圧迫感や過度の自己主張(視覚ノイズ)をできるだけ排しようとするデザインが現われ始めた。またコーナー設置型も、室内への収まりの新しい解決として評価された。

バスユニットの新傾向
現在では、集合住宅では大部分に、また戸建住宅でもかなりの比率でバスユニットが普及しており、防水・施工などの性能・構法上の理由から、バスユニットの採用は今や不可避となった。しかしこれまでは、大衆向け最大公約数的デザインの追及という面からであろうか、ベージュ系、霜降り模様、偽の石・タイル風といった傾向が顕著であり、心ある建築家はけっして既製品バスユニットを使おうと思わないだろうとまで言われてきた。しかし今年度は、こうした殻を破る極めて斬新なデザインの製品が登場した。シンプルで視覚ノイズを避け、現代建築好みの感覚を取入れたモダンな質感の内装材は、なかなかのデザインである。惜しくも金賞は逃したものの、これまでのバスユニットのデザインに新傾向をもたらす突破口として、高く評価されよう。

キッチンユニット
キッチンユニットは、もともと室内空間に露出する設備機器であり、また主婦層のニーズをくすぐるためにも、デザインはかなり洗練されてきている。したがって、ある意味ではデザイン的に飽和してきており、このところあまり斬新な傾向は見られない。新しさを求めたために、メンテナンス性をおろそかにしたデザインや、趣味に走って汎用性を捨てたもの、使い方をひどく限定するようなデザインも、残念ながら見られた。
ミサワホームのキッチンユニットは、同社のバスユニットと同様、例年他社とはやや趣を異にするデザインという印象である。どこが違うか考えてみると、他社の物が「置かれる製品」であるのに対して、この社の製品は「大工が作った建築の一部」を意識したデザインのように思われる。それが完成品としてきれいかどうかはデザインセンスの問題だが、地味で美しさに欠ける、との意見もある。前述のような「建築空間に収まった状態が本来」という視点からは、こういう姿勢は大いに評価されよう。

その他水回り機器
便器、便所手洗い器、便座、洗面化粧台にも、あまり大きな動きはない。洋便器のタンクレスタイプも出揃った感があり、他の機器は部分改良や焼き直しが主である。その中では四角い木製の台に角型流しを載せた洗面台が斬新であった。

グラフィック
すべてのジャンルの機器等に共通して言えることだが、一般に文字・マーク・表示などのグラフィックが良くないものが多い。せっかくスマートにデザインされた器具の真ん中に、社名や機種名の大きなロゴがあっては興ざめである。厨房換気扇のフードにも中央の目立つ位置に大きな操作・表示部分がある。ユニバーサルデザインという面から、左右勝手をなくすために左右対称にすることや、大きな文字は見やすく操作しやすい、というのも一理ある。しかし、それにしても全般に表示グラフィックが古臭くセンスがないものが多すぎる。日本語がデザイン的にスマートじゃないとか、大きな文字はどうしてもダサくなるというのは、デザイナーの怠慢ではないだろうか。

マイナスイオンの効果
マイナスイオンは健康に良いという説があり、空気清浄器等に関連して、昨今の流行のようである。しかし、簡単な機器で発生する程度の陰イオンが本当に健康上「効き目」があるのか、医学的には他に何らかの影響はないのか等については、まだ完全に解明されているか疑問が残るとする声もある。本来はこうした機能・性能上の有効性を十分に吟味してから判断すべきであるが、すでにこの種の機器が多量に市販されているという現実は無視できず、Gマーク審査の対象とせざるを得ない。今回は、あくまで「機能上は有効でとくに疑義・問題がないならば」という仮定で審査を行った。

「癒し効果」は個人の問題
マイナスイオンと同様、あるいはそれ以上に流行しているのが、「癒し」なるキーワードである。たしかに、現代ではさまざまな面での「癒し」が要求されているだろう。しかし癒し効果があるかどうかの判断は、本来は受け手側の問題である。「こうすれば癒し効果があります」などと主張するのは、所詮は販売するための時流にのった宣伝文句に過ぎない。まして、空気清浄器に「癒し表示ランプ」を付けるなどと言うのは、冗談が過ぎるのではなかろうか。