GDA2002 WINNERS 審査委員・審査講評 賞の構成 大賞 エコロジー賞 中小企業庁長官賞 ロングライフ賞
主催者あいさつ グッドデザイン賞 大賞選出過程 ユニバーサル賞 日商会頭賞 表彰式レポート
受賞結果速報 グッドデザインプレゼンテーション2002 金賞 インタラクション賞 審査委員特別賞 アンケート結果
審査講評
商品デザイン部門 審査ユニット6
部門長・ユニット長 大島礼治

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デザイン評価について
この審査ユニットの審査対象は家庭用メディア・コミュニケーション機器から、業務用メディア機器、通信機器を含むオフィス関連とそのアプリケーションソフトまで、実に幅広い商品群から構成されている。全体的には他のユニットと比べ外観的完成度は高く、審査は高水準のものとなった。
応募商品の中から気になる商品を大別し、総評を進めたい。

商品傾向に一言
プラズマTVや液晶TVは画面の大型化と同時に、消費電力の低減など実用性向上の努力が見られる。この造形の印象を形づくるのは基本的にフレームのデザインだが、ほんの僅かなバランスやディテール処理のデザインが大きな差となって表れるため、各社ともこの差別化によって凌ぎを削る激戦区商品といえる。
審査には多くの時間を割き、画面に対するフレームバランスなどを中心に、映像を映し出せるものは全て映像を出し、画像の有効領域とフレームバランスを確認した。その結果、いくつかの機種には画面を大きく見せるためか、画像領域周りの処理に問題を残した。
すでに一部の機種ではチューナー内蔵となっているが、多くの機種はチューナーを別置きのデッキ式としている。ディスプレイパネルは薄くなってもチュナーは従来型のビデオデッキサイズに合わせ、ラックも同様の理由からか奥行を大きく取っている。また浮遊感覚を強調するためか、ガラス棚が多用されているが極めて危険な印象を受ける。これらの要素は本来の薄型大画面だからこそ得られる空間価値を自ら薄めており、チューナーやDVDプレイヤーなど周辺機器の扱いが今後の商品開発の課題となる。
デジタル複合機やプリンターに代表されるオフィス機器は年々、小型高機能化が進み操作性においても改良が加えられている。最近の傾向として、コピー機本来のスキャン機能を利用したドキュメント作成とパソコンによるデータ管理・活用を提案する機種が主力になりつつある。今後のオフィス環境を考えれば、あるべき方向と認められるものの、セッティングに要する時間短縮とアプリケーションソフトを含めた操作性の向上が求められる。
また、この商品グループに見られる傾向として、操作インターフェイスにおける色彩の不調和と狭義のユニバーサルデザイン対応は再考する必要がある。
電話器は全般的にこのユニットの中にあって、デザインは低調である。特に家庭用FAX付き電話器は余りにも幼稚な表現でまとめ、女性にも操作しやすいという表現(デザイン)の勘違いが目立つ。呼び出し音や待機音にも実際の使用シーンを考えると問題があるものも見受けられ、色彩と同じく音の表現もデザインの重要なファクターと認識して頂きたい。
DVDプレイヤーなどのデッキ類は、店頭効果を優先してのことか、必要以上に金属感覚を強調した光沢処理の表現が目立つ。商品特性的にも造形的にも必要のない表面処理は、かえって操作性を低下させ、家庭の中にあっては煩わしい。
スケルトンの次は光沢という各社横並びデザインは、いかにも日本的であるがデザイナーの顔が見えなくなる。

金賞候補の3点について
この審査ユニットからは3点を金賞候補として挙げた。
ワコムのタブレットは永年にわたる継続開発の集大成的商品であり、コンセプトが明快と評価された。本体とスタンドの関係も上手く処理されており、スムーズな角度調整の機構は驚きである。更なる商品の熟成を願って改良点を述べると、手書き感覚の入力をよりスムーズにするには、フレームと画面の段差を極力なくすべきであり、実際に勢い良くスケッチワークを行うとその煩わしさに気付く。アプリケーションソフトとの関係性も含め改良を願いたい。
富士ゼロックスのインクジェットプリンタは大胆な造形処理によってまとめられており、強さと繊細さを合わせ持ったデザインである。しかし製品の使用環境を考慮すると、機能のわりには全体が大きく、スペースが限られるSOHO などへの配慮が求められる。
シャープのデータプロジェクタは全体が大変良くまとまっており、細部にいたるまでデザイン的配慮がされている。完成度の高い商品である。小型・薄型化への企業努力は強く感じられるが、実際の使用状況への配慮が、より完成度を高めるために必要であると感じられた。商品の普及を考えると、求め易い価格の設定が望まれる。
以上の3点が、金賞候補にノミネートされたが残念ながら金賞には至らなかったことを報告する。

中小企業長官賞について
中小企業長官賞に選ばれた株式会社オーエスのスクリーンは意欲的な商品で使い勝手も良く考えられている。片手での操作が容易で、スムースなスクリーンの上げ下げが信頼性を増している。移動時のハンドリングもバランスよくまとめているが、床置きのため保管時のスペースが気になる。

デザインの力
このユニットに限らず商品部門全体を概観すると、次代を切り拓く魅力あるデザインの少なさに年々気が重くなる。特に大企業の製品デザインに勢いがないのは、どういう理由なのだろうか?むしろ中小企業が真摯に作り上げた製品に納得がいくものが多い。
おそらく経営側とデザイナーとの距離が近い分だけ、製品に明快さと勢いが生まれるのだろう。
緩やかに衰退する製造業にあって、マニュアル的に進められる大企業の商品開発プロセスにもはや限界があるのだろうか。お決まりのマーケティング手法によって、数値から得られる情報を真実と信じ、流通側の意見に過敏に反応した結果、得られるのは各社横並びの商品であり、価格競争への参加権である。
デザインは外観の表現から、ビジネスの具現化手段へと変化しつつある。つまり、経営戦略とデザインは密接な関係にあり、デザインマネジャーは経営者と語り合う力を持たなければならない。
いまある閉塞感を破るのはデザインの力と信じたい故の思いである。