ユニット全体の概況
商品部門ファミリーユースのユニット4では、今年度は工業化住宅が建築部門へ移行したので、キッチン、浴室、便所などの水周り部品、エアコン類、その他設備機器、インテリアおよびエクステリア部材などが対象である。応募点数は129点で、工業化住宅が対象外になったことを考慮しても、昨年よりかなり減った。しかしそのうちの受賞数は53点(41.1%)と、過去にない高い受賞率である。審査委員としては特に大盤振る舞いをしたわけではないから、それなりに高レベルの製品が揃ってきたと言えなくもない。しかし全体を通して見た印象は、残念ながら「これと言って心に感じる物がない」と言わざるを得ない状況であった。

主な製品のデザインの傾向
このユニットから金賞を受賞したINAXのシャワートイレ「サティス」は、従来の便器・便座に見られた、必要な装置をごてごてと付加してきたデザインとは根本的に異なるものである。ロータンクを廃して通常の水道の水圧でも使用可能な直接洗浄方式を採用し、操作部分も最初から本体から切り放すなど、実にコンパクトなサイズと形状である。便器のデザインを最初から考え直したらこうなるという、画期的な製品である。
例年、洗面化粧台、浴室ユニット、システムキッチンの応募が多く、今年度も同様であった。どの製品もほぼ一定の水準に達しているため、本来の機能がさらに追求されており、ディテールに至るまでよく考慮されていることと、メンテナンス性や使い勝手という機能面にも、これまで以上の水準を要求した。たとえばシステムキッチンには、メルヘン調の色使いなど自己主張のあるデザインよりは、本格的な調理作業の効率を目指したデザインを重視した。浴室ユニットのなかには、派手で豪華すぎるバブル期デザインを引き摺っていたため選外となった製品もある。
PVパネル(太陽電池)には、時節がらいくつかの応募があったが、単に太陽エネルギー利用というだけでなく、建築仕上材として不自然さがなく、電気装置然としてことさら目立つことのない点を審査の基準とした。取って付けたようなデザインで視覚上邪魔になるものや、リード電極部分が銀色に光って目立つものなどは選外となった。
分電盤、インターホーン、火災感知器などは例年いくつかの応募があるが、後述のエアコン同様、建築空間への納まり具合と、無意味な自己主張のないことを選定条件とした。
建材の分野にも面白いものがいくつかあった。杉板を3層重ねたパネルは単板の欠点を改善した自然素材であり、エコソイルセラミックスは焼成せずに固化させるため「すさ」を混ぜた和風の味を出しており、滑りにくく汚れにくい床材なども、やや地味であるが評価を得た。
なお、せっかく洗練された造形であるのに、表示されている文字や記号のグラフィックが悪影響を与えているものも、残念ながら少なくなかった。金賞を受賞した便器も、製品の真ん中にことさら目立つ文字が表示されていて、せっかくのすっきりした外観を損ねている。

自己主張デザインと建築空間におけるデザイン
近年のエアコン室内機は、単体で見ればそれなりにデザインされていると言えなくはないのだが、青いランプや大きな文字の表示部分が機器の中央に大きく配置されているなど、自己主張が強く、ゲーム機もどきの妙なスタイリングが流行している。
インテリアの中でエアコンに真に必要とされているのは、快適な温湿度環境の実現である。そのための手段に過ぎない設備機器自体が、自己主張を始めてしまったのでは本末転倒である。無駄な情報を常時表示して、いかにも運転中ですと主張する必要はないのである。
従来のスタイルのおとなしいデザインの製品もあるのだが、それらのデザインにここ数年ほとんど変化はなく、また単品レベルで完結したデザインに終始していることについては同様であり、いまさらGマークに選定する価値は感じられないと判断された。その結果、今年度はエアコンはすべて選外という異例の結果となった。
エアコンに限らず、建築設備機器類は、建築空間に納まった状態が、本来のその機器・製品のデザインなのである。エアコンのデザインには、本質を見失って間違った方向へ走りつつある、「悪しき流行」が顕著であると言わざるを得ない。エアコン全滅は、ここで述べたようなデザイン傾向への警鐘という、審査委員からの切実なメッセージであることを理解されたい。