Good Design Award Good Design Award
Good Design Award 2004
Menu page
2004 Outline
Award
Etc.
Outline
審査委員/審査講評

コミュニケーションデザイン部門

審査ユニット長 左合ひとみ

略歴を見る

この部門は「環境」や「新領域」と同様に、時代の変動を反映してGマークに加えられた新しい部門である。それだけに、昨年まではまだ認知度も低く、多くはない応募作の中で輝きを放つ数点を通して評価基準を模索している印象があった。だが、モノからコトや関係に拡張していくデザインを審議する土壌は整いつつあり、的確な応募作の登場によって、部門の方向性を確立できる可能性も感じられた。
そして今年。最初に全応募作に目を通した時、期待どおりの大きな手応えがあった。「教育」をデザインしている作品がエントリーしていたのだ。子どもにこそ本物を、という真摯な姿勢のもと、本格的なスタッフ、出演者で作られた斬新で質の高いNHKの教育番組、「ドレミノテレビ」と「にほんごであそぼ」である。子どもの表現力や想像力を育む点だけでも未来を切り拓くデザインと言えるが、グッドデザインを生む社会に必要不可欠な、すぐれた受け手を育てるという意味でも高い評価に値する。結果的には「形なきもの」としては前例のない大賞を受賞し、デザインの概念そのものを拡げる好例となった。
もうひとつ、まったく新しいコミュニケーション方法を開発した革新性と社会的価値が際だっていたのが、慶應義塾大学佐藤雅彦研究室と毎日新聞による「日本のスイッチ」である。携帯電話のインターネットと新聞という対照的ともいえるメディアを使って日本の本当の姿を読み解こうとする一種の世論調査で、これまでにない「社会装置」の開発と言えるだろう。日常の些末なことにまで及ぶ質問と回答は、インタラクティブな娯楽にもなっている。以上の2作に共通しているのは、優れたコンセプトと表現によって社会的価値を創出する、コトや関係のデザインという点である。同様の考え方により、「世界グラフィックデザイン会議・名古屋」も、会議そのものをデザインし、情報過多の時代に於けるコミュニケーションのあり方を探った姿勢が、ツール類の精度と併せて高く評価できる。
全体的には昨年より質・量ともに向上しており、テレビ朝日の、可変性とインタラクション性を持つVIシステムが、VI、CIの既成概念を覆す発想で評価されるなど、特別賞候補に挙げられる秀作も少なくなかった。
このように審査基準が明快になる一方で、「提案性や革新性は持たないものの、コミュニケーション自体の質は十分な応募作」の合否の線をどこで引くのかが、しばしば議論の的となった。新奇性や審美性を主な審査基準とするデザインコンペとは一線を画す、Gマークのコミュニケーションデザイン部門ならではの視点を応募者に伝えていくべきであるが、今のところ、方法は受賞作の提示によるしかない。そのことも考え合わせると、部門初の大賞が持つ意義は、やはり大きい。

[コミュニケーションデザイン部門の受賞対象を見る]

 

ページのトップにもどる