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Good Design Award 2004
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審査委員/審査講評

建築・環境デザイン部門
B02:環境デザイン

審査ユニット長 内藤 廣

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新しい部門は、審査する側と応募する側の双方でつくり上げていくものだと思っています。どのようなものが評価されるのか、どの範囲が審査対象になるのか、審査する側も応募する側も手探りだからです。前年の評価を見て、次の年の応募が決まってきます。だから、賞の質とレベルは、審査する側と応募する側との双方で育てていくものなのです。
外部空間なら何でも受け入れるこの部門を立ち上げてから3年、今年の応募作を見ると、だいぶ軌道に乗り始めている、という印象を持ちました。他の部門に比べて応募数こそ少ないのですが、まちづくり、土木構造物、地下鉄、公園、ストリートファニチャーなど、作品はバラエティに富み、表現されているものの質も様々です。全体に応募作のレベルも上がってきていると思います。
1次審査はパネルで行うのですが、いつもながら審査は難しいものでした。最終的には実物を評価するわけですから、パネルの表現の向こうにある実物の良否を判断しなければなりません。このあたりが審査委員の眼力が問われるところです。2次審査は現地を訪れ、実物の良否を見ることになりますから、全国を手分けして見て回ります。毎年のことですが、これはかなりの重労働です。それでも、新しい意欲的な試みに触れる旅は楽しいものです。
今年、金賞に残った「長崎水辺の森公園」は、審査対象の範囲が6.5haと大きいだけに、パネル表現では伝わりにくく、実際に訪れて初めて分かる類のものでした。それだけに、現地審査した審査委員の責任は重くなります。敷地は、長崎湾の中央にまで張り出した広大な埋め立て地で、もともとここには市街地の延長としてさまざまな公共施設が建設される予定でした。まだ、景気のいい頃の立案で、残念なことに、こういう大きな事業は景気の動向が変わったからといって、すぐには止まりません。結果、膨大な埋め立て地が市街地の中央に荒れ野のように残されてしまったのです。
作品の主眼は、この大きな埋め立て地を、真に街の求めているニーズに合わせて再構成することにありました。運河状に張り巡らされた水路を丁寧に仕上げ、水辺を造り、運河を渡るいくつもの小さな橋を作り、公園を作り、広場や回遊路をデザインしています。さらに、敷地が面している港の水際がよくできています。港湾がかかわる水際は、通常はあまりデザイナーが関与することができません。しかし、この公園では、ボードウォークやペイブの仕上げ、照明に至るまで、丁寧に作り込んであります。こういう大きい計画では、なかなか細部にまでデザインの密度を上げていくことは難しいのです。いくつもの異業種が入り乱れる中で、調和した最終形に導くのは至難の業です。この計画では、そうした困難を乗り越えて、全体のコーディネートがうまくいっていることを特筆して評価したいと思います。審査で訪れた時、たくさんの市民が気持ちよさそうに散策し、子供達が楽しそうに遊んでいました。仕事に疲れたサラリーマンがボーッとしています。ちゃんと作れば報われる、それがこの作品を訪れた印象です。
デザインの質的な評価に確たる基準はありません。だからこそ審査委員が必要なのです。結果は審査委員の良識に負う所が大きいはずです。審査委員は阿吽の呼吸で入選作を決めていくわけですが、暗黙のガイドラインがないわけではありません。デザインの密度、完成度の高さ、社会の中で果たす役割、といったところが審査に当るうえでの共通の認識でしょう。Gマークを受賞したどの作品も、いずれかの項目が高いレベルにあったと判断されたものです。   
来年も多くの応募作が寄せられ、審査の場でエキサイティングな議論が交わされることを期待しています。

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