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Good Design Award 2004
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審査委員/審査講評

商品デザイン部門
A11ユニット:アミューズメント関連商品・設備、知育、教育関連商品・設備、公共機器・設備/
公共交通関連機器・設備、セキュリティ関連商品・設備

審査ユニット長 森田昌嗣

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この審査ユニットは、広範囲な4つのカテゴリーが審査対象であった。昨年度の当ユニットは、「公共機器・設備、公共交通関連機器・設備」と「セキュリティ関連商品・設備」のカテゴリーであった。今年度、「アミューズメント関連商品・設備」が、昨年度のエンターテイメント、ホビー、日用品等の審査ユニットから、「知育、教育関連商品・設備」が、オフィス、店舗関連商品等の審査ユニットから当ユニットでの審査に加わったカテゴリーである。4つのカテゴリーに共通していることは、すべてが公共もしくは公的な環境で使用される商品・設備等であるということだ。
当ユニットでの受賞率は、ほぼ昨年と同様の結果であり、特別賞に関しては、金賞を逃したもののエコロジーデザイン賞1点、中小企業庁長官特別賞1点が受賞した。カテゴリー別では、応募点数が最も多かった「公共機器・設備、公共交通関連機器・設備」が、受賞点数も多く特別賞2点、並びに金賞候補2点もこのカテゴリーからであった。
今年度2つのカテゴリーが加わったこともあり、4つのカテゴリーでの商品等のデザインにレベル差があった。しかし、広範囲であるが、公共もしくは公的な環境で使用される点で共通であり、その観点を基本に審査した結果、全体としては、商品そのもののデザインよりも、環境を構成する空間・もの・人との関係、そして相互のコミュニケーションなど、関係のデザインが考慮されて“かたち”に結びつけた商品等が高い評価を得た。
公共・公的デザインにおける関係のデザインには、公的・公共性におけるレジビリティ(わかりやすさ)とアンビギュイティ(多義的、あいまいさ)の両側面からのアプローチがある。「公共関連」や「セキュリティ関連」は、商品等が置かれるまたは設置される環境を秩序づけるレジビリティな関係が優先される。また一方、「アミューズメント関連」や「知育、教育関連」には、置かれる環境の違いを個性的に対応づけるアンビギュイティな関係が必要となる。
レジビリティを優先するデザインは、商品や設備・装置等の社会的意味と置かれる環境との関係を吟味し、マイナス(引き算)のデザインによる環境の秩序化のもとでの新たな魅力づくり(アンビギュイティ)のためのデザインへの展開が望まれる。しかしアンビギュイティを優先する場合は、環境の個性を引き出すための魅力を創出する環境因子を読み取り、その因子によるプラス(足し算)のデザインによる魅力づくりが先行するため、プラスのデザインが創る環境を予測し、魅力づくりの効果を減ずる要素を整理するレジビリティの側面からの検証が求められる。
以上、このユニットは、他の一般ユーザーを主体とした消費財の商品デザインとは異なった観点、「公的・公共デザインにおける関係性をいかに構築できているか」を審査の基本においているため、一時的な流行にとらわれない本質的な関係のデザインがより一層望まれる。また、中小企業の割合が高いのも当ユニットの特徴であり、限られた人材でのデザイン開発に向けては、例えば産学官連携を積極的に活かすことや異業種とのコラボレーション、そしてそのコーディネーション役としてのデザイナー活用などが有効な方法であると考える。

カテゴリ別講評

アミューズメント関連商品・設備 [受賞対象を見る]

このカテゴリは、昨年度の個人的なホビーや日用品など、個人利用の嗜好商品等の審査ユニットから本ユニットに移っての審査となった。パチンコやカラオケなどの関連商品や設備の応募が大半であり、前年度までと同様に脱日常の楽しさを演出するデザインの観点から、いかに評価するかで議論となった。結果的には、商品等自体を構成するさまざまな要素(部品や色彩等々)相互の演出性の点でのまとまりのある関係が構成されているものに良い評価が与えられた。これらの商品等は、パチンコやカラオケなどの店内環境との関係を考慮して審査を行うことが必要であるが、設置される環境との関係が判断しづらい商品自体での審査によるところが大きい点が課題である。つまり、これらの商品等のデザインがその環境を構成する空間と集団の利用者(操作は個人的であっても存在が公的であることでの集団)の関係によって、演出性を表出する要素として成立しているかを評価する必要がある。今後は、店内環境などの状況をビデオ等により把握できる方法を審査に取り入れることが望まれる。

知育、教育関連商品・設備 [受賞対象を見る]

このカテゴリは、昨年度と同様に応募点数が少なく当然の事ながら入賞点数も少ない。教育環境の改善の課題は、少子化が進むわが国にとって重要な課題であり、その取り組みが遅れていることの現れではないかと危惧するものである。特に、知育玩具や遊具の開発は、欧米諸国と比べて遅れている。わが国のアニメやゲームなどバーチャルな遊び環境が国際的に高い評価を受けているのに対して、実体のある遊び環境構築に向けての研究や開発は遅れており、一部には欧米の玩具等のコンセプトをリメイクしながらもオリジナルに劣るものもある。しかし、今回は、商品・パッケージから販売・活用方法までをマネジメントしたTシャツ・デザインキットのように、子ども達が参加することにより創造性を育みながらデザインする楽しみを体得させる、高い評価が得られた商品があった。この商品のように子ども環境の関係を構築するデザインが強く求められる分野である。

公共機器・設備/公共交通関連機器・設備 [受賞対象を見る]

このユニット内で最も多くの応募及び受賞点数となった公共関連機器・設備は、大きく都市・地域環境、施設環境、そして交通環境を構成する要素に分けられる。このカテゴリは、これらの諸環境における公共空間と利用者と機器等との関係をデザインする姿勢が明確に表現されたものに高い評価が与えられた。特に、都市・地域環境では、「エマージェンシーユニット」、「横断・転落防止柵」などが、施設環境では、特別賞の「不焼成リサイクルしっくいセラミックス」と「配管ジョイントシステム」などが、そして交通環境では、「万葉線超低床車両」、「地下鉄サインボード」、「新幹線自動改札機」、「JALクラスJシート」などが高く評価された。年々、これら公共のデザインのレベルが向上してきており、今年度も多くが受賞したことからもわが国における公共デザインへの関心の高まりとその必要性が定着してきたといえる。惜しくも金賞を逃した空気膜テントによるエマージェンシーユニットと万葉線超低床車両であったが、着実にわが国発の優れた公共デザインが生まれつつあることを物語っている。

セキュリティ関連商品・設備 [受賞対象を見る]

防災・防犯が急務となってきた現代社会においてセキュリティ商品等の需要は急成長している。このカテゴリは、セキュリティの機能面から公共・公的環境の中で脇役的な存在が求められる。今年度も脇役らしく精緻にまとめられた商品等が応募され多くが受賞した。これらの商品自体は、脇役であるために商品としてのアピール性は低く特別賞の対象となりづらい面があるが、インターフェースを含めたトータルなシステムデザインへの取り組みに新規性や独創性が評価される分野でもある。今年度は、残念ながらトータルなシステムデザインでの高い評価は得られず、今後を期待したい。また、監視システムの端末装置などは、一部、一般の家電や情報機器などの消費財と同様な造形処理が見受けられた。システムで構成されるこれら端末装置は、一般消費財と異なる使用環境であることを考慮したシステムデザインにおける独自の造形表現と、例えば施錠などの施設付帯装置での施設環境との調和などを考慮した環境デザインの視点からの取り組みなどを期待したい。

 

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