この審査ユニットは、広範囲な4つのカテゴリーが審査対象であった。昨年度の当ユニットは、「公共機器・設備、公共交通関連機器・設備」と「セキュリティ関連商品・設備」のカテゴリーであった。今年度、「アミューズメント関連商品・設備」が、昨年度のエンターテイメント、ホビー、日用品等の審査ユニットから、「知育、教育関連商品・設備」が、オフィス、店舗関連商品等の審査ユニットから当ユニットでの審査に加わったカテゴリーである。4つのカテゴリーに共通していることは、すべてが公共もしくは公的な環境で使用される商品・設備等であるということだ。
当ユニットでの受賞率は、ほぼ昨年と同様の結果であり、特別賞に関しては、金賞を逃したもののエコロジーデザイン賞1点、中小企業庁長官特別賞1点が受賞した。カテゴリー別では、応募点数が最も多かった「公共機器・設備、公共交通関連機器・設備」が、受賞点数も多く特別賞2点、並びに金賞候補2点もこのカテゴリーからであった。
今年度2つのカテゴリーが加わったこともあり、4つのカテゴリーでの商品等のデザインにレベル差があった。しかし、広範囲であるが、公共もしくは公的な環境で使用される点で共通であり、その観点を基本に審査した結果、全体としては、商品そのもののデザインよりも、環境を構成する空間・もの・人との関係、そして相互のコミュニケーションなど、関係のデザインが考慮されて“かたち”に結びつけた商品等が高い評価を得た。
公共・公的デザインにおける関係のデザインには、公的・公共性におけるレジビリティ(わかりやすさ)とアンビギュイティ(多義的、あいまいさ)の両側面からのアプローチがある。「公共関連」や「セキュリティ関連」は、商品等が置かれるまたは設置される環境を秩序づけるレジビリティな関係が優先される。また一方、「アミューズメント関連」や「知育、教育関連」には、置かれる環境の違いを個性的に対応づけるアンビギュイティな関係が必要となる。
レジビリティを優先するデザインは、商品や設備・装置等の社会的意味と置かれる環境との関係を吟味し、マイナス(引き算)のデザインによる環境の秩序化のもとでの新たな魅力づくり(アンビギュイティ)のためのデザインへの展開が望まれる。しかしアンビギュイティを優先する場合は、環境の個性を引き出すための魅力を創出する環境因子を読み取り、その因子によるプラス(足し算)のデザインによる魅力づくりが先行するため、プラスのデザインが創る環境を予測し、魅力づくりの効果を減ずる要素を整理するレジビリティの側面からの検証が求められる。
以上、このユニットは、他の一般ユーザーを主体とした消費財の商品デザインとは異なった観点、「公的・公共デザインにおける関係性をいかに構築できているか」を審査の基本においているため、一時的な流行にとらわれない本質的な関係のデザインがより一層望まれる。また、中小企業の割合が高いのも当ユニットの特徴であり、限られた人材でのデザイン開発に向けては、例えば産学官連携を積極的に活かすことや異業種とのコラボレーション、そしてそのコーディネーション役としてのデザイナー活用などが有効な方法であると考える。 |