この審査ユニットは、文具・オフィス雑貨・家具・設備・店舗用品・機器という幅広い分野で構成されている。
今年度部門全体の感想として、当然のこととも言えるが、環境問題に対しての取り組みが前年度以上に明確に表現され、素材の選定はもとより製造にかかわる環境対策から使用後の廃棄、再生等一貫したトータルなエコ対策が企業独自に組み立てられたものが多かった。
これは、ユーザー側の意識の高まりだけではなく、卸商・小売にまでいたる流通の過程においてもいよいよ本格的にエコロジーが意識されてきている表れであろう。企業のIR戦略でも大切なポジションとして取り上げられつつあり、環境問題が義務から戦略へという重要な課題として、各企業がオリジナルな展開を見せ始めた。 機能性、安定性と同様にエコロジーもデザインの基本条件として確実に定着してきたようだ。
また、審査委員のコメントが最も多かった項目としてカラーリング計画の詰めの甘さと、商品のロゴデザインの乱暴な扱いが挙げられる。商品の全体コンセプト、デザイン、機能については実に完成度が高く仕上げられていながら、カラーリングとロゴデザインのまずさで受賞を逸した商品がいくつか見られたのは非常に残念であった。この傾向は昨年度においても見られ審査報告でも指摘されていたのであるが、従来からの因習が強いためか同様の結果となっている。ネーミングも含めてカラーリング、ロゴタイプ等の群のデザインが開発プロセス全体のなかでいまだに後付けプロセスとされていることもその原因の大きな要素と思われる。
そのほか、ユニバーサルデザインとエコデザインを武器に完成度の高さで健闘する大企業グループに対し、アイデアで対抗する中小企業グループのユニークな商品群が目立った。この傾向は文具とオフィス雑貨で特に顕著に見られた。
昨年度中小企業庁長官特別賞に輝いた話題のアッシュコンセプト社の輪ゴム「アニマルラバーバンド」に続く商品として、(株)匠工芸の「TO:CA」、荒川技術工業(株)の「ワイヤーハンギングシステム」の2社が当ユニットから今年度の同賞に選ばれたこともその証しと言えよう。
また、低価格競争の行きづまり、盛り上がりつつあるブランド志向、高まる高品位化志向等の影響からか、店舗における商品展示システム等、商品を美しく見せる役目のライティング、展示をアピールするディスプレイ、食べ物をおいて見せるためのショーケース等の、店頭店内を演出するための什器・機器のデザインレベルが一段と高くなってきた。昨年度からこの傾向は出ていたのだが今年度は特に完成度の高いものが目立った。金賞に輝いた、ウシオライティング(株)の「安定器内臓形セラミックメタルハライドランプ」もその代表例である。
ネット販売に代表される無店舗ビジネスが年々増えつつある現在、質の高さで勝負する専門店、百貨店、コンビニエンスストア、セレクトショップ等の店舗販売において生き抜くための戦いの厳しさから生まれた。ユーザーと対面して店舗で商品を売るための新しいデザインに力強さを感じさせられる今年度の審査であった。 |