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Good Design Award 2004
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審査委員/審査講評

商品デザイン部門
A08ユニット:作業工具、産業機械、搬送機器・車両/試験機器

審査ユニット長 馬場了

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この審査ユニットのデザインが、グッドであるかそうでないかの分岐点は、そのものが果たすべき機能的な役割を、デザイン側から有効策として具体的な形に表しているかどうか?という、実に単純明快なところにある。審査委員はその観点に立ち、書類で表された企画意図を把握し、デザイナーがどのように独自のデザイン解決案を、新鮮で魅力的な色と形によって実現しているかについての審査を注意深く行った。
今年度は59点の商品がグッドデザイン賞として受賞し、そのうち金賞が1点、中小企業庁長官特別賞が1点選ばれた。全体の印象としては、デザインの平均水準が年々高くなり、「生産財であっても決して疎かに済ませないぞ」といった、ものづくりを支える基盤が高度化していること、初めてグッドデザインにチャレンジしたと思われる、中小製造業も数社あって、結果はともかく小規模の企業であっても、デザイン開発が必要不可欠な工程であることが普及したことなどが、明るい産業の未来を証明してくれた。反面、ここ数年の傾向であるが、Gマーク受賞の常連組に、「産業デザインはこの程度のものだろう」という、見切ったデザイン(処理)の商品が目に付き、やればできる実力を持った企業の、チャレンジ性の希薄さに不安を抱いたのも事実であった。
今年度の審査を通じて話題となり論議を呼んだ商品を事例に、講評を行いたい。金賞を受賞したオリンパス(株)の工業用ビデオスコープシステムは、エンジニアが創出した技術成果を、人がラフに、簡単に、最高の性能を引出す道具に仕上げるという、デザインの原点的な仕事振りを審査委員全員が高く評価した。松下電工(株)のレーザー墨出し器は、使い方と機能をデザインが素直に形に表しつつ、レーザーマーカーとしての精度感を魅力的に表現したデザイン力が素晴らしかった。兵神装備(株)の塗布・充填用ポンプは、ロボットの先端につけて使用されるユニットパーツであっても、商品価値を高めるためにデザインに挑んだ姿勢と完成度の高さが、中小企業庁長官特別賞受賞に繋がった。(株)クボタの農業用トラクタは、的確な操作を誘うインターフェースが、高齢化する農業従事者に親切であること。ティラーズ熊本(株)のジェットファン・温室用空気循環器は、無理をしない素直な部品構成が、効果的な造形と質感を表現して受賞商品となった。近年デザイン領域の拡大とともに、「ものからこと」へ、なんでもできそうなソフトやコンテンツに関心がシフトし、「もの」のデザインが軽んじられる傾向にあるが、受賞した商品のいずれもが、ソフトやコンテンツに、実態を与えたデザイン本来の力量が評価されたものである。
例年に引き続き論議に十分な時間を費やしたものに電動ハンドツールがあった。マーケティングが呈示する言語のコンセプトを、デザインが形に翻訳するデザインコンセプトの表し方にひとひねり足りないような気がする。装飾過多な表面処理は、特定の嗜好を満足させるホビー商品には適しているかもしれないが、作業現場にふさわしいヘッドウェア、ボディーウェア、フットウェアとの調和を考えると、この分野の商品には一定の普遍性が求められる。デザインサイドから現場発の「商品はかくあるべき」という、マーケティングに対する逆提案を期待したい分野でもある。
次世代を築くデザインイノベーションは、地味ではあるが現場に足を運び徹底して観察し、使いこなし、独自の問題点を発見することから始まる。それが新しいデザイン的解決案・造型を生み出す。当初は完成度が低くてもよい。マーケティングの下請けに甘んじないデザインの気概を感じさせる商品と出会いたいものだ。これが本ユニット審査委員一同、次年度に託す期待である。その点からもオリンパス(株)の工業用ビデオスコープで果たしたデザインの役割は大きいと思う。

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