この審査ユニットでは、乗用車・カーオーディオ類・カーアクセサリーに加えて、自転車・バイク関連商品が本年度より審査の対象となった。おのおののカテゴリに評価基準があるなかで格差を考慮しながら審査にあたった。
まず乗用車についてはコンセプトを明快に表現できているものを評価したが、全体として昨年よりもさらに企業間・車種間の格差が大きくなったという印象を受けた。コンセプトが明快な商品は企業が自らの想いを語ることができており、恒例となった公開審査プレゼンテーションでも観客を惹きつけていた。そのため、商品コンセプトやデザインコンセプトが曖昧なものは印象に残りにくかった。
乗用車のなかで我々審査委員が注目したのは、高級クラスのカテゴリである。数年前はパッケージやスタイリングの優れたコンパクトカーに各社が力を入れ、注目に値する商品が多く評価対象となり、本ユニットでもコンパクトカーを選んできた。しかし今年は、トヨタが「ゼロクラウン」を登場させたのと同じくして日産から「フーガ」、ホンダから「新型レジェンド」が登場し、戦いの場はこのクラスに移ったといえる。
このクラスで特に強調すべきことは、日本企業のデザインアイデンティティ確立を実感させられたという点である。たとえばトヨタクラウンは、初代が1955年に日本初の純国産乗用車として誕生し、トヨタ初の海外輸出車でもあり世界基準を見据えた車であった。12代目となる新型クラウンでは今までの『らしさ』に加えた変革を求め、開発担当デザイナーが、ものづくりの原点である伝統工芸の現場を訪ねた。そして金沢の人間国宝、徳田八十吉氏、漆塗りの「八木茂工芸」との出会いによって「車にも日本の深い感性を出したい」との思いを強くしたという。
従来は海外の車が範とされており各社のデザインはヨーロッパ車的・アメリカ車的要素が見受けられたが、現在はこのようなジャパニーズデザインがヨーロッパ車的・アメリカ車的な要素に並ぶ志向性のひとつとして確立されてきた感がある。
加えて、かつては奇をてらったり目立つことを主眼にしたかのようなカーオーディオのデザインにも、車の運転時に使用するというインターフェイスが考慮されるようになってきた。近年では車のインテリアも魅力的になってきたことから、日本車の良さを総合的に評価できるようになってきている。しかしながらカーアクセサリー関係においては、昨年に引き続き相変わらず量販店で目立つための造形や色の選択から抜け出せていないと感じられた。奇抜性ではなく、高級感やスポーティさといった車内の雰囲気やグレードに馴染むデザインが求められていることを改めて強調したい。
今年から本ユニットの審査対象に加えられた自転車・バイクに関しては、応募点数がまだ少なく講評はしがたい。しかしながら、バイク関係では近ごろ話題となった大型スクーター、自転車関係では電動アシストなど、新たな生活の広がりを予感させるものが見られた。次年度以降に大いに期待を寄せている。 |