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Good Design Award 2004
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審査委員/審査講評

商品デザイン部門
A05ユニット:調理・食卓商品、調理家電、生活家電

審査ユニット長 大島礼治

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この審査ユニットは、食卓の食器類や調理機具、生活家電にいたる幅広い商品群から構成され、身近で生活に溶け込んだ商品が特徴である。伝統工芸を基盤とした小規模量産品から家電製品にみる大規模量産品まで生産体制の違いと流通規模の違いが同居するユニットのため、審査は「良いデザインであるか」を基準に進められた。
昨年に比べ全体のデザインレベルは向上しており、他の審査ユニットと比較しても商品としての質は高く、日本のプロダクトを代表する感がある。審査委員はすべての商品を実際に手にして使い勝手を確かめ、通電可能な生活家電はできるかぎり操作性の確認を行なった。その結果、気になるいくつかの問題点を指摘することでこのユニットの講評としたい。
今年度は調理関連にデザインの力で解決した商品が多く、代表的な3点をここに紹介する。
旭化成ライフ&リビング(株)の合成樹脂ふたつき耐熱保存容器「ジップロックコンテナー」は廉価でありながら、冷凍保存から電子レンジ加熱まで一つの容器で行え、日本の食生活を変えるほどの影響力がある。冷蔵庫内にあっても内容物の視認性は高く、目的のものをすぐに探せる効果があり、うっかり保存も減ることと思われる。ハリオグラス(株)の耐熱ガラス製保存容器「ピタッとレンジ角」は本体の超薄肉成形とふたの嵌合は絶妙のシール感があり、高機能を単純な構造で実現する設計力と成形技術の高さを示した逸品である。オクソーインターナショナルの「OXO(オクソー)グッドグリップス アングルドメジャーカップ」は、腰をかがめずに上から覗き込むことで一目で計量できるメジャーカップ。高齢社会にはありがたい商品と言える。まさにデザインの力で解決した事例として評価したい。
この優れた小物に対し、気になるのが生活家電の分野である。あまりにも横並びデザインが多すぎる。メーカーによる商品の差別化は見い出しにくく、おのずと細部の表現や仕上げに眼が移る。
一時のスケルトンブームが終わり、次は光沢メッキによる高級感、今度は青色LEDの氾濫である。夜中のリビングや寝室、キッチンを想像して頂きたい。青く光るLED表示の数々、感情のない電子音が無人の空間に鳴り響くことを。青色LEDを否定しているのではなく、行過ぎた表現方法に問題がある。
同様のことを冷蔵庫の庫内に言える。ガラス色調のプラスチック棚は庫内照明の影響もあって、保存食品が美しく見えないのはなぜだろうか。もちろん店頭における差別化の表現手段と理解はするものの、追従するメーカーの存在が気になる。調理する主婦にとって庫内は単なる保管場所ではなく作品棚と同じ価値を持つことを理解してほしい。やはり、冷蔵庫や洗濯機は他の生活家電と比べ住宅設備機器としての位置付けが強く、使用頻度の高い家電製品である。ゆえに、店頭効果で競うのではなく、機器の持つ本来の機能追求で競っていただきたい。
このようにデザインの同質化は、店頭での差別化が薄れ、消費者にとっては選択肢が狭まれることを意味する。これは、店頭において価格競争の誘発を意味し、結果的には市場の衰退に繋がる。
本当に永く使える家電がなぜ生まれないのか? そろそろ、消費されるデザインと決別すべき時ではないのだろうか。アジア各国でデザイン施策が進められるなか、日本の役割を改めて考えると、そこには消費されるデザインは必要なくなる。本当の意味で「未来を拓くデザイン」が現われることに期待したい。それが日本ブランドに繋がるものと信じている。

カテゴリ別講評

審査委員 高尾茂行

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調理・食卓商品 [受賞対象を見る]

今年度の調理・食卓商品部門のデザイン応募件数、受賞件数とも対前年比130%となり商品のジャンルにおいても広がりが感じられた。なかでも旭化成ライフ&リビング(株)の「ジップロック コンテナー」と「サランラップ」、呉羽化学工業(株)の「NEW クレラップ」などより身近な商品が増加した。従来の食器・グラスといった製品のデザインとは異なり、よりユニーバーサル性・環境への対応さらには幅広いユーザーを対象とした便利性を表現しなければならない。使用目的は単一でありながら、従来品からいかにデザイン向上を図るかが重要かつ困難なポイントといえる。各受賞商品、細部にいたるまで徹底した機能研究がなされており完成度も高いと評価した。他の製品で新しい傾向に感じられたのは、女性デザイナーの活躍である。アッシュコンセプト社「タグカップ」の多様な人々と使用シーンに対応した「ノン・バリアデザイン・コンセプト」、ハリオグラス(株)「色でおしらせ!のみごろチェック哺乳瓶」の感温プリント採用によるダイレクトなグラフィック表現、などの新鮮かつ優しさの感じられるデザインが、好評であった。

調理家電、生活家電 [受賞対象を見る]

前年度金賞受賞が2点選出されたこの部門において今年度の金賞・その他の特別賞とも該当するデザインがなかった。部門内では、候補としてダイソン(株)が日本市場へ向けて独自にデザイン開発した「ダイソン DC12シリーズ」のこだわりの感じられる効率化の追求と、「デジタルモニタリング機能付きモーター」をはじめとする新機能は、日本の家電商品には無い革新的デザインであると評価された。また象印マホービン(株)「ZUTTOシリーズ」の炊飯ジャー・電動ポット・コーヒーメーカーの3製品のデザインは、通常コンサバティブなスタイルになりがちなミドルロークラスのなかでは、インテリア性あるフォルムと合理的かつシンプルにまとめられたディテールを高く評価した。キッチン空間をはじめ、居住空間において日本独自のデザインテイストがより洗練される中、ユーザーの美的価値観の高まりを意識したデザインも一部で見受けられた。今後、より日本から世界へ発信できる美しい家電デザインを期待したい。

 

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