「口紅から機関車まで」ならぬ「ペット用品から墓場まで」。
日用品を中心にしたアナログ商品が多いユニットであるが、審査は難航した。というのも、昨年のロボット同様、時代を象徴するアイテムが加わり、これまでのようにある一定のリニアな審査基準ではなかなか解決しない難題が待受けていたからだ。
ひとつはペット用品。我々人間にとっては雲をつかむような道具だけに機能性や外見をどう見極めるか? 2次審査ではメーカー側に直接プレゼンテーションを行ってもらい、審査委員の情報不足等、さまざまな不備に対し配慮した。例えば大型犬、小型犬それぞれに、求められるレインコートのカタチが異なることなど、参考になることが多かった。不況の折、年々市場を拡大している分野だけあり、メーカー側の熱意は相当のもので、最近の日本経済では見られないエネルギーのようなものを感じることができたことを付け加えておく。
また、ゲームソフト((株)ナムコの「塊魂」)がこのユニットに今回初めてエントリーされGマークを受賞したのも時代だろう。少子・高齢化によりゲームのカタチも根本から問われている。これまでのマニア層に向けたコンテンツビジネスにプラス、高齢者やファミリーに向けた視点、いわばデザインビジネス的要素が付加された感がある。コントローラーを介さない新しいスタイルが評価された「太鼓の達人」や「Eye
Toy」も他者とのコミュニケーションやインタラクティブな側面に力を入れた商品で、好例だ。若者が部屋に一人こもって格闘する従来のゲームスタイルから誰もがすぐに参加できるユニバーサルデザイン的なゲームスタイルへの変化が見受けられた。
そして、もうひとつ我々審査委員を最後まで悩ませたのが、仏壇に代表される仏具と墓石のデザインのあり方である。今回墓石では初めてグッドデザイン賞を受賞したインターロック(株)の「IPSE」は、黒御影のモダン建築を思わせ、既成の墓石としてはこれまでには見られないデザインコンセプトおよび設計システムを持っている。また、『カタログハウス』の厳しい評価基準をクリアして生まれた仏壇「ジダン」は、さまざまに交錯する仏壇デザインの問題を巧みに解決した、現代仏壇の代表的存在ともいえる商品である。
ただ、留意しなくてはいけないのは、墓石や仏壇のデザインが現代彫刻であったり、モダンな木製家具では不十分であるということだ。墓石、仏壇としての”顔”を、住宅環境や家族のカタチの変化を捉えながらどう読み取り、表現するか? が問われる。空間デザインだけでなく、時間をデザインするといった発想も重要だろう。床の間のある古民家と高層デザイナーズマンションの双方にふさわしい仏壇デザインなど存在するわけがない。双方のデザインを柔軟に受け止める審査基準が必要になってくると思われる。
いずれにせよ、このユニットの今後の動向は、日本経済同様やはり高齢シニア層の将来計画にかかっていることだけは間違いなく、Gマークの審査基準も彼らの手の内にゆだねられている気さえしてくる。 |