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Good Design Award 2004
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審査委員/審査講評

商品デザイン部門
A02ユニット:日用品、ガーデニング用品・雑貨、スポーツ・アウトドア商品、エンターテイメント・ホビー関連商品・楽器

審査ユニット長 長濱雅彦

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「口紅から機関車まで」ならぬ「ペット用品から墓場まで」。
日用品を中心にしたアナログ商品が多いユニットであるが、審査は難航した。というのも、昨年のロボット同様、時代を象徴するアイテムが加わり、これまでのようにある一定のリニアな審査基準ではなかなか解決しない難題が待受けていたからだ。
ひとつはペット用品。我々人間にとっては雲をつかむような道具だけに機能性や外見をどう見極めるか? 2次審査ではメーカー側に直接プレゼンテーションを行ってもらい、審査委員の情報不足等、さまざまな不備に対し配慮した。例えば大型犬、小型犬それぞれに、求められるレインコートのカタチが異なることなど、参考になることが多かった。不況の折、年々市場を拡大している分野だけあり、メーカー側の熱意は相当のもので、最近の日本経済では見られないエネルギーのようなものを感じることができたことを付け加えておく。
また、ゲームソフト((株)ナムコの「塊魂」)がこのユニットに今回初めてエントリーされGマークを受賞したのも時代だろう。少子・高齢化によりゲームのカタチも根本から問われている。これまでのマニア層に向けたコンテンツビジネスにプラス、高齢者やファミリーに向けた視点、いわばデザインビジネス的要素が付加された感がある。コントローラーを介さない新しいスタイルが評価された「太鼓の達人」や「Eye Toy」も他者とのコミュニケーションやインタラクティブな側面に力を入れた商品で、好例だ。若者が部屋に一人こもって格闘する従来のゲームスタイルから誰もがすぐに参加できるユニバーサルデザイン的なゲームスタイルへの変化が見受けられた。
そして、もうひとつ我々審査委員を最後まで悩ませたのが、仏壇に代表される仏具と墓石のデザインのあり方である。今回墓石では初めてグッドデザイン賞を受賞したインターロック(株)の「IPSE」は、黒御影のモダン建築を思わせ、既成の墓石としてはこれまでには見られないデザインコンセプトおよび設計システムを持っている。また、『カタログハウス』の厳しい評価基準をクリアして生まれた仏壇「ジダン」は、さまざまに交錯する仏壇デザインの問題を巧みに解決した、現代仏壇の代表的存在ともいえる商品である。
ただ、留意しなくてはいけないのは、墓石や仏壇のデザインが現代彫刻であったり、モダンな木製家具では不十分であるということだ。墓石、仏壇としての”顔”を、住宅環境や家族のカタチの変化を捉えながらどう読み取り、表現するか? が問われる。空間デザインだけでなく、時間をデザインするといった発想も重要だろう。床の間のある古民家と高層デザイナーズマンションの双方にふさわしい仏壇デザインなど存在するわけがない。双方のデザインを柔軟に受け止める審査基準が必要になってくると思われる。
いずれにせよ、このユニットの今後の動向は、日本経済同様やはり高齢シニア層の将来計画にかかっていることだけは間違いなく、Gマークの審査基準も彼らの手の内にゆだねられている気さえしてくる。

カテゴリ別講評

日用品、ガーデニング用品・雑貨 [受賞対象を見る]

東芝ライテック(株)のスクエア形蛍光ランプや松下電器産業(株)のオキシライド乾電池など、日本を代表するメーカーによる次世代スタンダード商品の開発には本当に頭が下がる。しかし、受賞の約半数を占めた中小企業の頑張りにも敬意を表したい。中小企業にとって、無尽蔵に費用が発生する技術革新的な研究は極めて難しい状況だ。デザインに白羽の矢を立てるのは当然のことである。
今回受賞した中小企業の商品をあらためて見ていると、微細に変化する住宅環境や流通形態を巧みに捉まえているのが理解できる。また、提案型商品をデザイナーと一体になって喧々諤々生み出している経営者の姿が浮かんでくる。
今の経営者の特徴は、かつての経営者と違いデザインを特別視することなく、仕入れ材料のように必要不可欠なものとしてデザインを導入していることだろう。奇を衒うことなく飽くまで自然にデザインと向き合っている。
中小企業オーナーとデザイナーの連携なくしてこのカテゴリーの将来はない。両者の関係をさらに深め、人々の生活シーンを潤わせてほしい。

スポーツ・アウトドア商品 [受賞対象を見る]

スポーツ用品分野はここ何年か機能素材ブームであったと言えるだろう。例えば、綿に代わりハイテク生地がスポーツウェアの主流になった現状が良い例だ。そんな一大ブームも下火になり現在は目標を見失いつつある。さらに、ナイキやアディダスといった外国ブランドが市場を席巻する事実も国内メーカーの商品企画の行方を揺さぶっている。そうした影響が今回のスポーツ・アウトドア用品のデザインに少なからず影を落としていることは否定できない。加えて、日本の大手スポーツ流通の閉館や大手メーカーの業績の落ち込みは周知の事実である。少子高齢化によるスポーツ人口の減少と先の2社をはじめとした外国ブランドの台頭が主な理由だ。
新しいスポーツ用品をつくり出すことは新しいスポーツシナリオがあってはじめて可能になることを今一度肝に銘じてほしい。ユニバーサルデザインや健康をキーワードに、日本ならではのスポーツシナリオづくりはまだまだやり残されたことがたくさんある。時代を切り取ったポジティブなスポーツギアの誕生が待ち遠しい。

エンターテーメント・ホビー関連商品・楽器 [受賞対象を見る]

(株)ナムコの「塊魂」がGマークを受賞した。ゲームソフトだけでの受賞はGマーク48年の歴史で今回が初。コンテンツの質の高さに加え、独創的な造形性が評価された。また、ハード主体での受賞だが「Eye Toy」や「太鼓の達人」のコントローラーを介さないゲームスタイルも、テレビゲームをさらに一段高いエンターテイメントメディアとして昇華させる可能性を持っている。これらの商品は、コミュニケーション性及びインタラクティブ性に優れ、ひとりゲームの暗さがないのが特徴である。昨年のロボットデザイン元年に引き続き、Gマークにおけるゲームデザイン元年の年と言えるかもしれない。
また、楽器部門ではヤマハ(株)の電子型グランドピアノが金賞候補に最後まで残った。惜しくも賞は逃したが、オリジナリティあるフォルムと人間との距離、時空間への気遣いを感じるダウンサイジング感は日本車を連想させる。今後、日本のみならずアジア市場、さらには世界のグランドピアノ市場をリードする逸品であることは間違いない。

 

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