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Good Design Award 2004
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審査委員/審査講評

商品デザイン部門
A01ユニット:身のまわり、健康・美容商品、高齢者・ハンディキャプト関連商品

審査ユニット長 サイトウマコト

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今回のGマークの審査では、小さな企業の頑張りと大きな企業の着実な仕事が目に付いた。
後者をひとつふたつ取り上げれば、資生堂がある。古くからパッケージを主体としたデザインの重要性に着目し、数十年におよび一級の仕事をしてきた自信が見え隠れしている。またセイコーウオッチ(株)の腕時計「WIRED XYZ」は自分たちの仕事を再び見つめ、海外の流れとは一線を画した、日本の時計産業のリーダーとしてのプライドを示していたように思える。
個々の対象では今回金賞を受賞した耳かけ形デジタル補聴器「リサウンド・エア60」は、補聴器の一番の課題である重量感と存在感を徹底的に改革した。機能的にはこもり感の解消、反射、高機能性を追求しており、外と耳の中を開放的に繋ぐオープンエア設計、耳の中での反射を考慮した独自の特殊耳せんと最新デジタル信号処理技術を併せた設計をしている。それにより従来の閉塞感を解消し、快適に長時間使用できるようになっている。たとえば食事の時の「モノを噛む音」や「飲み物を飲む音」も不快な音にならず、心地よく食事がとれるようになっている。そして「補聴器を使用していることを他人に気づかれたくない」というユーザーの意識を反映させ、超小型本体と透明で極細なエアチューブを使用することで、耳に掛ける形でありながら、耳の穴に装着するタイプの物より目立たなくなっている。視覚デザイン的にも過不足のない形でまとまっている。カラーのバリエーションにおいても白髪の状態にも合わせやすいものがそろっていて、なかなかの優れものだと思う。
もう一点は中小企業庁長官特別賞を受賞した(株)犬印本舗の産後リフォーム下着、マタニテー腰部保護プロテクター、妊婦帯などの一連の商品群は、この世界でありがちなデザインが未消化な商品とは異なり、機能面、デザイン性も素直で見ていて気持ちのよい作りに仕上げられている。従来の妊婦帯というスタイル、デザインから脱却していて新しいスタイルを提案している。何よりもマタニティのイメージを明るく軽くしているのはうれしいことである。デザイン、価格ともによく考えられている商品である。
一点、今回特別賞受賞を逃したがつけ加えて取り上げたい仕事がある。HOYA(株)のビジョンケアカンパニーの眼鏡用両面複合累進設計レンズ「HOYALUX iD」である。このレンズは全く新しい「両面複合累進設計」を世界で初めて採用した画期的なレンズである。レンズ表面を複合的に活用することで、遠くから近くまでのクリアな視界を広げるとともに、従来レンズより揺れや歪みを大幅に改善している。※参考(「累進」とはレンズの度数変化のことで、一枚のレンズで遠くから近くまでを見るために設計された、境目のないレンズのことを「累進屈折力レンズ」とよぶ。)これまでの片面累進(表か裏のいずれかに累進作用を持たせた累進レンズ)での限界を越えるために、レンズの両面を使って累進の効果を出すという「両面複合累進設計」という仕組みになっている。それにより眼からの距離の異なるレンズの表面と裏面との役割分担を変えることで、従来のレンズ設計の「クリアに見える範囲を広げるとともに、揺れや歪みも滅ぼす」という論理に矛盾する課題を解決できている優れものである。
今回受賞にいたらなかった審査対象のなかにも、可能性を秘めている商品がたくさんあった。落胆することなく次回にいい仕事を見せてほしいと期待している。

カテゴリ別講評

審査委員 國本桂史

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身のまわり商品 [受賞対象を見る]

このカテゴリでは、さまざまな方向への新しい試みが行われていた。斬新な素材と、従来からある素材を組み合わせて使用したものなど、素材遣いの振幅の大きさの割に製品自体はうまくまとめられており、丁寧なデザインとなっていた。また、全体的に、ギミック・機構という大げさに人の目を引く仕掛け的な部分の少ない製品が多い中、8面にカーブしている偏光レンズを採用したサングラスや、「両面複合累進設計」を世界で初めて採用したレンズなどが目立った。特にこの世界初のレンズについては、眼からの距離の異なるレンズの表面と裏面との役割分担を変えることにより「クリアに見える範囲を広げるとともにユレ・歪みも減らす」という、理論的に矛盾する課題を解決している。このような眼鏡関連商品などに見られるデザインの試みの新しい芽生えが、このカテゴリの商品を「成熟しているがデザインにおいては停滞していない」という印象を与えているのであろう。

健康管理・美容商品 [受賞対象を見る]

このカテゴリで、大きく印象づけられたことが2つあった。まず1つ目は、「システムとしてのデザイン」である。使用者の手元のセンサーを内包した機器類から計測データを発信し、遠隔地での情報処理で健康管理のサービスを行うという製品があった。最新技術とサービスの在り方が一体化され、システム自体をデザインする、という新しい日本のデザインの方向を予感させるものになっている。これはその他ヘルスメーターなどの健康機器にも見られ、毎日の計測結果をデータ化し、コンピュータの中で時系列も含んだカタチで管理・把握するという、社会の健康志向に対して高いレベルで応えている商品などが注目された。もう1つは、マタニティ分野での新しい試みである。従来の印象から抜け出ていながらオーバーな装飾を使うことなく、丁寧で素敵な印象を与えている商品が、見事特別賞を受賞した。このような発信をこれからも続けていってほしいと願っている。

高齢者・ハンディキャプト関連商品 [受賞対象を見る]

現在の日本は「高齢化社会」から、すでに本当の「高齢社会」へ移行してしまっているのだが、社会全域での製品の高齢者への対応はまだ十分ではない。しかし本年度の受賞商品は全般にその対応の成熟度にレベルの高さが感じられた。特に、介護を「する側」と「される側」両方の視点に立った商品デザインの高い計画性が読み取れた。また“環境への配慮”という点も加えられる状況へ発達してきているようだ。特別賞を受賞したデジタル補聴器は非常に高い機能と高いレベルでの整容性対応により、それを使用する場で補聴器の使用者へ話しかける側の人の気持ちも配慮されている。光触媒機能を利用している手すりなどは人間工学的な検討にとどまらず、表面処理というところに素材デザインを行い、新たな価値観を生み出している。また、介護ベッドや電動車いすのような電動式のハンディキャプト商品に使用者へ配慮の進化が感じられるようになってきている。

 

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