G00D DESIGN AWARD 2011

2011年度グッドデザイン大賞候補




新治療施設および重粒子線治療システム

11G10041
受賞番号:11G10041, 11G11051, 11G14008

受賞対象名:
新治療施設および重粒子線治療システム

受賞企業:
独立行政法人放射線医学総合研究所+株式会社東芝
+株式会社日本設計

プロデューサー名:
独立行政法人放射線医学総合研究所 理事長 米倉 義晴

ディレクター名:
建築/株式会社日本設計 医療施設設計部 
チーフ・アーキテクト 高橋 正泰
装置・情報システム/株式会社東芝 
社会インフラデザイン担当 グループ長 伊豆 裕一

デザイナー名:
建築/株式会社日本設計 
医療施設設計部 村山 純二、建築設計群 武田 新平
装置・情報システム/株式会社東芝 デザインセンター 
北山 雅彦、石原 富章、乙葉 茂、鈴木 淳也、齋藤 祐子、椎野 康弘、吉村 義崇


概 要

がんの克服は現代社会において重要な課題である。その治療は、身体にできるだけ損傷を与えず、社会復帰しやすいことが理想とされる。重粒子線治療は、外科的手術が必要が無く、生活の質が維持できる治療法として世界的にも注目が高い。独立行政法人放射線医学総合研究所(放医研)は、1994年より重粒子線治療の臨床試験を開始。世界を牽引しながら研究を重ね、今回普及を目指し、技術、施設、装置、情報システムすべてを一新した。世界に誇る高度先進医療として、患者やスタッフの負担を軽減することで、高い次元の安全性と、患者のことを第一に考えた、「おもてなし」の心が感じられる治療環境を実現した。

ユーザー・社会に伝えたいこと

重粒子線照射システム(11G10041)
手術などの治療や施術は痛みを伴うイメージがあるが、痛みを伴わない重粒子線治療は、日本が世界に誇るべき医療技術である。最先端医療にふさわしい環境の創出を目指し、重粒子線照射システムのデザインに取り組んだ。「おもてなし」の心を意識したデザインは、人の命を預かる環境として、重粒子線治療の普及と共に、世の中に受け入れられることで、日本の医療発展に寄与できることを願う。

粒子線治療施設(11G11051)
人間のスケールを越えるコンクリートの塊りに対して、どのような社会への貢献という解を見出すかが大きなポイントであった。単に研究所という施設群であることにとらわれず、環境のためにできること、真に患者のためにできることを追求することで、ここが研究施設やさらには治療施設であることさえも忘れさせるような空間の創造が可能となることを伝えたい。

重粒子線照射システム(11G14008)
「おもてなし」の心は、究極のサービス精神に昇華され、日本人が世界に誇ることのできる文化のひとつであると考える。その日本が世界に誇る最先端医療に、「おもてなし」のある環境をデザインしたことは、大きな意義があったと感じる。私たちは、日本の心を活かしたものづくりを、今こそ世界にアピールすべきではないだろうか。

審査委員の評価

これまでに蓄積された粒子線を利用した癌治療のすべての知見・成果を集約して開発された、施設、設備、治療ノウハウ、医療サービス等のすべてを含んだトータルサービス・システムで、今後海外を含めた他地域への展開のモデルとなるものである。患者の心理的な負担が大きいがん治療の現場において、「全ては患者のために」というビジョンのもとに、医療機器メーカー、建設設計会社、医療スタッフが最高のサービスを提供しようと協力し合っているところが評価できる。
また、顧客である患者の満足度を担保しつつ、この高度ながん治療技術をビジネスとして成立させようと努力している点を積極的に評価したい。特に、属人的な能力に左右されがちな治療行為を、複数の場所での展開を可能にするために、オペレーションを可能な限りリーンなものとし、自動化を試みているところが、医療サービスとして優れている。日本の医療産業自体の国際競争力を高め、かつ日本らしい医療技術を通じた世界貢献にもなることが大いに期待できる最先端のシステムデザインである。
※ より詳しい情報は[グッドデザイン ファインダー]でご覧いただけます。

重粒子線照射システム(11G14008)
粒子線治療施設(11G11051)
重粒子線照射システム(11G10041)