ENGLISH

審査講評

ユニット9:産業のデザイン
素材・部材/生産、加工、流通関連機器設備/オフィス・店舗・展示関連機器設備
山田 晃三 デザインディレクター

産業機器のデザイン……この領域は、生産や流通の過程における機器・部品類と、オフィスや店舗などの業務用機器・設備等が対象となる。両者に共通するのは、対象製品の使用者が一般コンシューマではなく、仕事のプロ、あるいは働く人々である。よって、どのような仕事のプロなのか、何を目的とした機器なのか、その専門性が多岐にわたりかつ深い。それぞれの専門における機能的検証はもちろんだが、使用にあたっての「信頼性」がもっとも重要な判断基準となる。プロとしての仕事の精度、誇りまでをも醸成できれば優れた道具といっていいだろう。流行に左右されない、華飾は必要としない、その代わりにメーカーには自社の製品開発への一貫した姿勢が求められる。応募時の開発目標やデザインへの取組みの姿勢なども勘案して審査に臨んだ。
たとえば検査・測定機器、制御機器や加工機器、発電機などはほとんど一般の人の目には触れない。が、日本の産業技術の基層を支える精緻さを充分に有している。こうした優れた縁の下の機器たちにはぜひ光を当てたい。一方、オフィスなどの必需品、複合複写機などは機能面の進化に対しインターフェイスなどの配慮に疑問が残った。さらに韓国のメーカーの製品に見られる精度の高さは圧巻であったが、一部に過剰さも見られ安心感を疎外した。
大企業の担う産業界における重要な役割と、多くの中小企業の挑戦的精神が、この領域においてバランス良く機能することを願って止まない。