ENGLISH

審査講評

社会のデザイン、デザインによる新しい取り組み
大島 礼治 インダストリアルデザイナー

このユニットは、「社会のデザイン」と「デザインによる新しい取り組み」の2つの領域から構成され、応募対象は単体で目的を達成される工業製品から、地域に貢献する参加型のデザインや研究開発・教育・人材育成・創業などを目的とした取組みのデザインと幅広い分野に及んだ。

その中から特筆すべきものを数点紹介しよう。本田技研工業(株)から応募された「インターナビによる走行データを用いた東日本大震災での移動支援の取り組み」は、震災の翌日から、自動車通行実績情報マップとして多くの人々に利用されたことは記憶に新しい。自動車に搭載されたカーナビの一機能が震災時に威力を発揮するとは開発者すら気付かなかったことと思われるが、他社と異なった製品開発のアプローチは、今後の日本のモノづくりの在り方を明示した気がする。
同じく震災時、報道で、現地で活動するボランティアの背中の色分けされたゼッケンに多くの人が気付かれたと思う。この「できますゼッケン」のもとは大学生が考案し、(株)博報堂 hakuhodo+designが、混乱する現場でも実行できる仕組みへとしたものである。被災地における新たなコミュニケーションツールとして高い評価を得た。
(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモから応募された「サイクルシェアリングのプラットホームデザイン」も煩雑な会員証発行の手続きが無く、携帯電話1台で予約・貸出・返却・履歴確認までが一元管理できるビジネスモデルが評価された。
この他にも(株)ジェイアール東日本都市開発の「2k540 AKI-OKA ARTISAN」と、筑後地域雇用創造協議会からの「九州ちくご元気計画」も地域活性化の好事例として紹介したい。
気になる傾向として注意して頂きたいのが、産学連携、地域参加型、コミュニティー支援、エコの観点からなどの慣用句的な語彙が先行し、実際の成果物(結果)と乖離していることが多々みられたことは残念に思う。今後の参考にして頂ければ幸いである。