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審査講評

ユニット12:コミュニケーションデザイン パッケージ/サイン/メディアコンテンツ/広告・宣伝など
永井 一史 アートディレクター

 コミュニケーションデザインを扱う当ユニットでは、パッケージデザインが占める割合が多いのは例年通りであったが、あとの半数は多様性に富んでおり、あらためてコミュニケーションデザインの領域の広さと可能性を感じた。大きな傾向として、このカテゴリーにおいても、アジアを中心とした海外からの応募の増加が印象的であった。また、近年企業のCSR活動が新しい潮流として活性化していたのだが今年大幅に減少してしまったのは残念である。
 当ユニットを代表するものとして、間伐材をつかった携帯端末を、間伐材でつくった楽器のドキュメント映像で伝える「森の木琴」。大量生産ではなく、デザインする楽しみを個人に解放する「STAMP IT」。障害を持った方々のアートの力を経済活動に結びつける「だんだんボックス」があり、いずれも本年度の審査におけるテーマである”適正”という視点からも、高く評価できるものであった。
 “適正”というデザインへの問い直しは、今年だけで終わるテーマではないだろう。なぜなら成熟化社会、資源の限界性、そして我々に大きな衝撃を与えた東日本大震災によって、日本の近代を牽引してきた社会の仕組みや価値観、産業構造が変質して行かざるを得ない現代において、デザインも社会の要請によってその意味や役割を変えていく大きな転換期だと思うからだ。その時に新しい流れにカタチを与え、広げていくコミュニケーションデザインはますます重要になっていくだろう。次のデザインへの萌芽は今年の受賞結果にもくっきりとあらわれている。これからの時代を牽引していく新しいコミュニケーションデザインに大きな期待をしたい。