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審査講評

ユニット11:建築・土木・環境のデザイン
北山 恒 建築家

本審査ユニットは「建築・土木・環境」を対象とするが、それは人間を取り巻く人工環境すべてを対象とするような大きな領域である。昨年までは「オフィス・店舗・生産関連施設」というユニットと「公共・文化教育関連施設、土木・環境関連施設、まちづくり、地域づくり」という細分化されていたユニットが統合されたものである。実際には住居系の建築を対象とする「すまいのデザイン」というユニットが設けられているので「人間を取り巻く人工環境すべて」という大げさなものではないが、用途による区分(=機能性能を評価する)ではなく、人間が環境の中でシームレスに経験する空間そのものを評価することが狙われている。
このような人工環境は他のグッドデザイン賞の対象とは異なり、固定的環境をつくるものだと思われていた。しかし、東日本大震災で津波によって流される「建築・土木・環境」をみて、それは人間の生命スパンとの比較で生まれた時間認識の差でしかないことを知る。
そして、それは長時間、人間を取り巻く環境として存在することで、さらに大きな責任をもつ。
3.11を経験して「建築・土木・環境」という人工環境は、資本や権力の表象になるのではなく、より切実な人間の生活に対応するものであるという、あたりまえのことが改めて確認された。
今年の審査では委員長から出された「適切さ」というキーワードとともに、このあたりまえな価値観を念頭に置いて評価した。意識のパラダイムは変換しているのだ。