災害時の有用性や節電など、公共用品や設備についてこれまで以上に深く考えさせられる年となった。特に医療機器は災害緊急時や停電など非常事態の様々な問題を浮き彫りにした。審査ではこれらの視点を考慮し、開発におけるデザインアプローチの意義が優れているもの、生活者や使用者視点の課題が明確でデザイン成果を上げているものを選んだ。
本ユニットの分野毎にみると(1)公共用途の機器・設備は課題解決型デザインが多く、課題の発見と設定がより高度化しているものが多く見られた。(2)医療機器の用品と設備も課題解決型デザインが主流であり(1)と同様の傾向であった。特に使用者などの高度なユーザビリティを実現した商品はデザイン(人間的価値)の視点に立ったアプローチが明確にされており、高度医療技術や汎用技術の使用や応用をデザインによって総合的にまとめあげる先進性が見られた。今後医療用品・設備のデザインに強く影響を与えるものと思う。(3)教育用品・機器設備は応募数も少なく残念であったが、今年の災害は少なからずこの分野にも影響を与えると思うので、今後の活発な開発に期待したい。
公共のデザインは人々へ利便性や信頼感を与え、文化的な質や精神性を育むものである。一方、災害など緊急事態になればタフで柔軟な適応力が強く求められる。具体的なデザインテーマが出現したこの分野。今後、飛躍的なデザイン開発が望まれている。