グッドデザイン賞の審査に関わって今年で7年目になりますが、この7年間はデザインの歴史の中でもその役割が大きく変換していることを強く感じています。
これからデザインが向かう方向を、本年のGマークで示唆できるよう、微力ながら頑張らせていただきます。
応募される皆様の熱意にこたえるべく、審査の精度を高く保ちたいと思いますので、応募資料に書かれるご説明などはできるだけ客観的な視点で明快に表現していただきますようお願いいたします。
今年もたくさんのGood Designに出会えることを楽しみにしています。
※2009年5月に公開したものです
正しいデザイン
デザインは夢を具体化する善の行為であると思われ続けてきました。その力が購買の動機付けになり、経済成長に大きく寄与するということを疑う余地のない時代がずっと続いてきました。過去に経験のない世界的な経済危機や環境破壊を前に、私たちは、人間がこれまでに生産したすべてのものにデザインが深く関与してきたという事実を自覚し、はたしてデザインが正しいことだけに関わってきたのだろうかということを問い直すよい機会を得たのかもしれません。デザインは人の心に何らかの情緒的な刺激を与えるものであるという認識は、ときに「よいデザイン(グッドデザイン)」という定義を曖昧にし、すべてを許してしまう危険性をも含んでいます。
デザインという定義が誕生してから現在までの人間の生活の営みを、モノづくりの大きな実験の場であったと捉えると、現代の私たちは、その豊富な経験から、何が正しいものづくりであったか、真に生活を豊かにしてきたかを冷静に分析できる要素や、判断力を身につけることができたともいえるかもしれません。すべての人がデザインの真価を冷静に問えることができる時代が来たといえるかもしれません。
グッドデザインという定義は、「よいデザイン」というよりもむしろ「正しいデザイン」と解釈した方が理解しやすいかもしれません。なぜならば、この言葉の方が、すべての人々がものづくりに責任を持ち、真の豊かさを見つめる前向きな姿勢があらわれているような気がするからです。
今こそ正しいデザインの力が求められています。これをチャンスととらえ、素晴らしいものを見せていただきたいと思います。
※2009年5月に公開したものです
いまメーカーは、モノが売れない時代にこそ、しっかりとしたメッセージをユーザーに発信する必要に迫られています。その商品が何をメッセージとして発信し、私たちをどう啓蒙していくのか、美しさの背後も見ていきたいと考えています。美しさは、外観だけでなく心まで美しいという観点です。
また、少しずつ時代とともに進化を続け、ブランドや製品をサステナブルで完成度の高いレベルに持ち上げていく行為も、“点の開発から線の開発”へと、積み上げてきた資産を無駄にしない大切なデザインポリシーだと考えています。どこが新規で、どこが改良されたのかというポイントを、経時的に写真とともに分かりやすく説明していただきたいと考えています。
※2009年5月に公開したものです