2009年度受賞結果の概要

2009年度審査総評/審査講評

2009年度審査講評

審査委員イメージ

ユニット9:オフィス・店舗・生産関連施設

隈 研吾

建築家


今年度の印象を一言で言えば、インテリアデザインの一層の弱体化ということに尽きる。建築、インテリアの境をひとたび取り外して、人間の働く空間、商業する空間のデザインを横断的に考えるというのが、このユニットのテーマであった。ところが、応募数においても、受賞数においても、インテリア系は極めて件数が少なく、そして内容も低調であった。
理由を考えてみた。世界を見渡しても、インテリアデザインは確かにリーマンショック以前のような勢いが無い。リーマン以前、インテリアはビジネスをパッケージング化するためのもっとも効率的なツールとして、重要視された。高度に流動化した資本主義体制化であるレストランチェーンを高く売り抜けるために、インテリアによるパッケージングは、味とサービスによるパッケージングより、はるかに手っ取り早く、効率的であり、簡単に言えば「人をだましやすい」手法だったのである。その結果として、過剰なほどにオーバーデザインされたインテリアが世の中に溢れた訳だが、その世界的潮流もリーマンショックで一段落した。さらに、日本的事情を付け加えれば、リーマン以前からすでにこの手の過剰なインテリアに対して、日本人のノリが悪かった。インテリアデザインの主力は、アラブ、中国、ロシアなどの「勢いのいい」国々で、少子高齢化社会へと急激に転換した日本人の関心は、質素堅実なミニマル系プロダクトデザインや、さらに渋く堅実なリノベーション系のインテリアデザインへと、既にリーマンショック以前から向かっていたのである。それがリーマンでさらに加速されたというのが、今回の低調の一因であることは間違いない。しかし、もう一つ別の要因も、僕は感じている。この手のリノベーション系インテリアに関心のある人は、そもそもグッドデザイン賞(Gマーク)などといった包装紙(パッケージ)で、自分のデザインしたものにハクツケをしたいなどとは思わないらしいのである。どんな仕掛けを用いたら、彼らが競い合うような「場」が作られるのだろうか。それを考え付かない限り、このパッケージ否定社会となった日本の中で、Gマークは生きられないのではないかなどと、個人的に心配になった。