2009年度審査総評／審査講評
2009年度審査講評
今年はWindowsとMacのOSがメジャーバージョンアップするのに伴い、ハードウェアの意匠も見直しの機運が高まった。もっとも、２つのOSは21世紀を定義するものとはほど遠く、操作は煩雑になったが本質的なコンピューティングは進化していないという閉塞状況を打ち破れずにいる。
そうした中にあって、サムソン電子のミニノートPC・N310は、この世に産声を上げた30年ほど前に人々が思い描いた夢のパソコンを今日的な製造と意匠で提案し、他メーカーとは一線を画する新しいカタチを見せてくれた。２つのパーツを上下から合わせただけの外装は柔らかい印象を与えるもので、触れると柔らかいと感じる塗装をまとわせることで皮膚に近い身体性をものにしている。他のPCが硬さを払拭できず、ピカピカでテカテカの硬い質感に終始しているのに対して、N310は柔らかいというキーワードを視覚と触覚の両方から追求し、人に寄り添うハードウェアはかくありたいという意志を貫いている。孤高であるにもかかわらず日常性を表現しているという点で唯一無二のデザインを獲得した。
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