Good Design Award 2003 Winners
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審査委員/審査講評
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GDP グッドデザインプレゼンテーション2003
審査委員/審査講評

商品デザイン部門
ユニット4:オーディオ・ビジュアル関連、家庭用情報通信関連商品

佐藤 卓

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この審査ユニットの審査対象は、オーディオ・ビジュアル関連及び家庭用情報通信関連商品。主に目と耳を通して情報を受けるための道具である。厳密に言えば身体全体で受け止める情報と言えるので「主に」という言い方になる。例えばこのユニットで審査された対象のうち、代表的な製品として、テレビというものを考えてみる。テレビというものは現在の生活において、どういうものなのだろうか。かつては所有していることで優越感をおぼえた時代もあったが、そのうちテレビ自体の機能の差異で選ぶ時代があり、今や新製品は液晶やプラズマという平面形状が当たり前の時代で、使用空間での在り方が変わり、現在は立体のブラウン管テレビから平面形状テレビへの買い替え時期に至っている。しかし、この買い替え時期を過ぎれば画面の美しさも各社ともさらにレベルが高くなり、ユーザーもその技術の差異競争にはほとんど興味がなくなり、テレビのことなど、よくわからないレベルにまで一気に至ると言っていいのではないか。現在でもコストダウンや消費電力低減などの送り手側の努力が、テクノロジーによってさらにスピードを上げ、皮肉なことにそのあまりの速さにユーザーには多くの情報のほとんどが伝わらずに次から次に商品が出る、という状況である。そのような中にあって人々が「テレビで受けることができる情報にはある程度の質があればよくて、問題はコンテンツである」と思うに至るのは当然のことではないか。新しく登場してきたテレビ番組を編集できる製品のように、好きな時間に好きな情報をより手に入れやすくなってきている状況では、ますますその傾向が強くなると思われる。テレビという存在自体は、できればないほうがよく、究極には2次元の画面さえあればいいのである。それでは人はテレビを何で選ぶのか。価格が安ければなんでもいいというように、もちろん人によって異なることは言うまでもないことだが、心あるユーザーは“物理的に必要な画面の枠”のデザインを見ることになる。「無くす」という方法がひとつあるが、それもデザインでありメーカーの意志である。いわゆるディティールにデザインに対する志が見えるかどうかということである。そして製品を通してメーカーへの信頼感を確認し、ものづくりに対しての考え方まで見抜く時代に入ってきている。今国内の家庭に存在する1億6,000万台と言われているブラウン管テレビがそのうちすべてゴミになるという現実に対して、メーカーはどんな対策を考えているのかなどとユーザーは問うことになるわけで、そこに考えを述べることができるメーカーである必要がある。このようなことは何もテレビだけに言えることではない。テレビのことを考えることはある意味、家電製品の今後を考えることでもあると思うのである。このユニットの製品は技術的にも高いレベルにあるものが多く、それだけにさらに何を我々ユーザーに届けてくれるのかを厳しく求められるのである。我々審査委員もそれぞれの専門分野での意見と、一人のユーザーとしての意見をこの審査会でぶつけ合って、意味のある厳正な審査を行うことができたと思っている。 

■ジャンル別講評

オーディオ・ビジュアル関連商品[受賞対象を見る

このカテゴリーは、技術的には高いレベルの製品が多く、それだけに審査基準のひとつでもある「未来を拓くデザインであるか」が技術的にということだけではなく、デザインから感じ取れるかが重要なポイントであった。テレビはその中でも各社デザインの競い合いによりそれぞれの方向性がある程度見えるのに対して、プロジェクターやDVDプレイヤーなどはその印象が薄かった。オーディオ関連商品で気になる点は、明らかに他社のデザインの影響を受けて消化しきれないまま製品になっていると思われるものがあったことである。送り手側にそのような意識がないことはわかるが、デザインの倫理の問題として客観的に十分検討したうえで誤解を生まないよう製品化する必要だ。このカテゴリーの製品は生活環境空間においてその存在感をどう考えるかが、今後より重要なポイントになると思われる。新しい機能とともに使用空間への新しい考え方の提案を今後さらに期待している。

家庭用情報通信関連商品[受賞対象を見る

このカテゴリーで、インターネットテレビ電話機や多機能のファクシミリなどに共通して感じられたことは、インターフェイスデザインがわかりにくいということである。特にグラフィック要素がわかりやすく整理されているとは言い難いものが多い。両方の手で受話器が取りにくい、あるいはファンクションとして問題があるものもあり、ひとつの中に多くの機能を持たせる場合は、それだけ難しいことを十分理解する必要がある。整理しきれないまま商品化されていると思われるものがいくつかあった。それからオーディオビジュアル関連商品のカテゴリーでも述べたが、このカテゴリーでも電話機で、明らかに他社の過去Gマークを受賞したデザインを模倣していると思えてしまうものがあったことは残念であった。いつのまにか無意識のうちに影響力のあるデザインに引き込まれるということはあると思うので、常に客観的に検討する必要がある。プロダクトマネージメントの重要な仕事でもある。

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