2002年度グッドデザイン大賞候補

■社会システムデザイン/新日鉄の廃プラスチック再資源化プロジェクト
受賞番号 02D14001
応募企業名 新日本製鐵株式会社
プロデューサ 新日本製鐵株式会社 技術総括部  近藤博俊
ディレクター 新日本製鐵株式会社 環境部 小谷勝彦、丸川 裕之+株式会社オーシマデザイン設計 大島礼治
■概要
従来リサイクルできずにゴミとして焼却されてきた家庭用廃プラスチックを、焼却炉を新設することなく、安全性に優れた既存の鉄鋼生産設備(コークス炉)を活用することにより、プラスチック製品の原料となる油と水素系クリーンエネルギー、製鉄原料として100%再資源化します。コークス炉による資源回収技術は、従来のマテリアルリサイクルでは実現できなかった品質の優れたバージンプラスチックへ戻す世界初の技術であり、現在、北海道から九州まで全国4カ所の製鉄所において家庭用廃プラスチックを受け入れています。今後は世界各国にも技術輸出を行い、新しい社会システムの実現を目指しています。
■デザイナーの思い・主張
これまでの発想を転換し、既存の鉄鋼生産設備を活用して、ゴミを資源に100%リサイクルできる技術を世界で初めて開発しました。「今日のゴミは明日の資源」という理念のもとに、動脈産業のインフラ(製鉄設備、技術)を使って、静脈産業(リサイクル)を行うという、21世紀型社会システムの未来像をデザインしました。
■大賞選出に向け特に評価を求めたいポイント
大切な資源を未来に残す、持続可能な社会システムをデザインしました。
■審査委員のコメント
廃プラスチックがプラスチックの原料である油に戻る。<コロンブスの卵>のようなこのプロジェクトを、グッドデザイン賞大賞にノミネートできることを嬉しく思う。それも、新日本製鐵が有する既存の鉄鋼生産設備であるコークス炉を利用することから、4つの製鉄所で2000年秋から順次稼働体制を敷いているとの実績も喜ばしい。処理能力は現在、君津、名古屋、室蘭、八幡で計12万トン。「容器包装リサイクル法」に基づく年間約500万トンの家庭用廃プラスチックの再資源化が、この技術によって実現する可能性を秘めているのだ。
このプロジェクトは、産業構造の変化に対応する企業の姿勢の現われだ。技術供与、技術輸出の格好のテーマとなるだろう。それらを含め、動脈産業を静脈産業と一体化させる社会システムデザインだと思う。システムである以上、発想の転換が必要だったはずだ。製鉄業にとって聖域とでも言うべきコークス炉に<ゴミ>を入れるという英断に拍手を送りたい。(森山 明子 審査副委員長

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