2002年度グッドデザイン大賞候補
■デザイン住宅/
 9坪ハウス
受賞番号 02B12001
応募企業名 株式会社コムデザイン
プロデューサ 株式会社コムデザイン 代表取締役 岡崎泰之
ディレクター 株式会社コムデザイン 取締役 水藤祐之
デザイナー 小泉誠
■概要
「9坪ハウス」は、建築家・デザイナーによる優れた住宅デザインを商品化し、流通させる新しい住宅産業「デザイン住宅」である。日本が世界に誇る建築家・増沢洵の名住宅建築「最小限住居」を原型に、その魅力を受け継ぎ、現代気鋭のデザイナーがリメイクデザインする住宅を商品化している。「9坪ハウス」は、受注設計型ではなくプロダクトデザイン等同様デザインありきの住宅である。これによりユーザーが優れた建築家・デザイナーのデザインする住宅を家具や車などを買うようにそのまま気軽に購入できる仕組みが出来る。
ユーザーに対しより良いライフスタイル・住空間を手に入れる機会を広げると同時に、従来受注設計型の建築家・住空間デザイナーの職能・業態を大きく変えるビジネスモデルとして広く社会に提案する。
尚、既に2002年4月末より販売を開始している9坪ハウス小泉誠 TYPE1,TYPE2に加え、2002年10月12日には新たに8人の建築家・デザイナーによる8つの9坪ハウスの新作デザインを発表予定。新たな商品開発にも力を入れている。
■デザイナーの思い・主張
住宅デザインを「新しいライフスタイルを生み出すソフトウェア」として位置付け、増沢洵の「最小限住居」から5つのデザインルール(=5原則)を抽出した。その5原則はコンピュータで例えるならOSにあたり、そのOS上に乗るアプリケーションを様々な建築家・デザイナーにデザインしてもらう仕組みをデザインした。(プロデューサー:岡崎泰之)
半世紀前に自邸「最小限住居」を設計した増沢洵氏の精神をいかに、現代社会での生活、そして実際に住まうオーナー4人家族の生活を通して解釈し、受け継いでいくのかをいつも念頭においてリデザインした。結果的にそれが「最小限住居」の5原則(3間x3間の正方形プラン、3坪の吹き抜け、切妻屋根の外形、丸柱、メインファサードの開口部)に収束し、プロダクト(モノ)としての新しい魅力に繋がれば良いと思う。(デザイナー:小泉誠)
■大賞選出に向け特に評価を求めたいポイント
1. 新しいデザイン産業の創出=新しい建築の創造
9坪ハウスは、従来の受注設計型ではなくプロダクトデザイン等同様デザインありきの住宅である。このことにより年間1人の建築家・デザイナーが手掛けることのできる1〜10棟という住宅設計数から、100〜1000棟という規模の住宅デザインの流通が可能になり、新しい住宅デザイン産業が創出される。これは、すなわち新しい建築が創造するしくみであり、9坪ハウスは流通から建築を変える全く新しい試みである。
2. リメイクデザインという新しいデザイン手法
リメイクデザインは新しい建築を生み出す空間系クリエイティブの新しいデザイン手法である。音楽、映画、車などの他ジャンルのクリエイティブ業界には既に存在する手法であるが空間系クリエイティブにはなかった手法であり、この手法を用いることによりオリジナルが持つ理念の継承及びデザイン時間の短縮を図りながら新しいデザインを生出すことが可能になる。
3. シンプルな購入方法:ユーザーにとってのメリット
ユーザーが良質な住空間を容易に購入する機会を提供
4. 新しい職能の開発:建築家・デザイナーにとってのメリット
従来の受注設計型に加えてデザインありきのプロダクト
■審査委員のコメント
9坪ハウスは、増沢洵氏の名作を50年の時を経て小泉誠氏が巧みにリメイクしたものである。戦後の最小限住宅を、現代のカジュアル感覚にフィットした新しい住宅に転化する事に成功している。広さや豪華さに憧れがちな家づくりに警鐘を鳴らし、簡素ながらも快適な暮らしのイメージを提示している点を評価した。
販売システムは、9坪ハウスの思想と共に価格付きプロトタイプデザインをWeb発信している点と、9坪ハウスに適した土地探しから完成までトータルにフォローする点が、ユーザーにとって従来と違う選択肢であり、デザインをより身近なものとする上で大いに期待したい。(芦原 太郎 審査委員

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