GDA2002 WINNERS 審査委員・審査講評 賞の構成 大賞 エコロジー賞 中小企業庁長官賞 ロングライフ賞
主催者あいさつ グッドデザイン賞 大賞選出過程 ユニバーサル賞 日商会頭賞 表彰式レポート
受賞結果速報 グッドデザインプレゼンテーション2002 金賞 インタラクション賞 審査委員特別賞 アンケート結果
審査講評
建築・環境デザイン部門 環境ユニット
ユニット長 内藤 廣

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本年度の審査を終えて
今回のこの審査ユニットの審査で目立ったのは、やはりモエレ沼公園の圧倒的なスケ−ルの大きさと密度の高さでしょう。イサム・ノグチの最後の作品という物語を除いても、この応募作には群を抜いた説得力があります。半島のように突き出た公園の敷地をイサム・ノグチの造型が形作っています。大きな築山を作り、斜面を作り、池を作り、森を作り、ある所にはオブジェを配しています。なにしろランドスケ−プのすべてが、ノグチの造型感覚の元でコントロールされ、デザインされているのです。
この公園は、休みの日には多くの人でにぎわいます。これはランドスケープデザインが人々に受け入れられていることの証だと思います。残念なのは、あまりのスケールの大きさに、プレゼンテーションが追いついていない点です。この作品に接して、今年度からGマークで積極的に受け止めることとした環境デザインの領域では、応募者のプレゼンテーション方法も新しく考えなくてはいけないと思いました。
道路公団の四国横断道徳島サービスエリア周辺のランドスケープも力の入った応募作でした。これまで高速道路は、それが抜けていく場所のことなどあまり丁寧に扱ってきませんでした。安く早く道路を通すことが至上命題だったからです。この風潮も変わって来ていることを感じさせるに充分な内容でした。
応募対象の辺りは、四国八十八ケ所の巡礼の一番札所であるお寺がある所です。道路は参道を断ち切るかたちで横切ります。また、すぐ近くには第一次大戦の時のドイツ人収容所があり、この時のドイツ人との交流からドイツ文化が根付いているという興味深い所です。こうした文化的な背景を、文明の利器である高速道路がどのように咀嚼するかが求められたわけです。道路の縦断線形を変え、盛り土をし、擁壁に工夫を凝らすなど、実にさまざまなアイデアを駆使して取り組んでいます。
その他にも、すぐれた多くの作品がありました。勇気ある応募にこの場を借りて感謝したいと思います。
この環境デザインの領域は建築と違って、それぞれ事業主体の性格も様々に異なり、デザインすることが置かれた事情もまったく異なるわけですから、ある程度その背景も勘案して審査に臨みました。つまり、審査する側が応募対象の抱えている事情まで理解する努力をした上でのジャッジを心掛けました。そういう意味で、今年の審査は緩やかだったかも知れません。
しかし、応募対象の中にはあまりに旧来型の開発スタイルに終始しているものもありました。やはりこれからは、デザインすることの意味、公共空間のデザインを行う上でのマナーというものについてデザインする側は厳しく考えていかねばならないでしょう。

環境ユニット:近未来への展望・期待
これまで、橋や公園といったランドスケープデザインに関する応募は、建築・環境デザイン部門で一括して取り扱ってきました。今年は、建築の審査を担当する審査ユニットと分かれて、環境デザイン審査ユニットとして独立した審査を行いました。新しい審査ユニットということもあって審査対象の総数は少なく、やや寂しい審査になるかと思われました。ところがフタを開けてみると、内容が充実していて、なおかつバラエティーに富んでいて、将来のこの部門を占うかのような楽しい審査となりました。
Gマークはフレキシブルな審査システムです。環境デザイン領域も、どこからどこまでの範囲をカバーするなどといった決まりはありません。強いて言えば、建築の枠内に収まり切らないもの、外部空間なら何でも、といったところでしょうか。
来年は、さらに多くの空間がエントリーされることを期待しています。未だ黎明期にあるこの領域のデザインを応募者の方ともども盛り上げて行きたいと思います。デザインにこだわったものなら何でも大歓迎です。