GDA2002 WINNERS 審査委員・審査講評 賞の構成 大賞 エコロジー賞 中小企業庁長官賞 ロングライフ賞
主催者あいさつ グッドデザイン賞 大賞選出過程 ユニバーサル賞 日商会頭賞 表彰式レポート
受賞結果速報 グッドデザインプレゼンテーション2002 金賞 インタラクション賞 審査委員特別賞 アンケート結果
審査講評
商品デザイン部門 審査ユニット9
ユニット長 佐藤康三

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この審査ユニットでは、店舗に関わる商品や設備、産業機械・設備およびアミューズメント関連商品を審査しました。
この審査ユニットからは、松下電工株式会社のレーザー墨出し器「レーザーマーカー墨出し名人」と、スウェーデンのHornell InternationalとErgonomidesign ABによる「溶接マスク」の2点が金賞に選ばれました。
インタラクションデザイン賞には、株式会社パイロットの磁気筆記板「チョークレスボード」、中小企業庁長官特別賞にメーコー工業株式会社のパーラーチェア「トーカイ・エムネット」がそれぞれ受賞しました。これらのデザインは、この審査ユニットの応募対象の中から特に優れたデザインとして選出し、各審査ユニットの代表委員より構成する「特別賞審査委員会」での長時間の論議の末に選び抜かれたものです。各特別賞を受賞した企業の今後の更なるデザイン開発の発展に期待します。

このユニットで審査を担当した領域は、先に記したように3つの分野にわたっています。それぞれに商品デザイン開発の企画意図、デザインソリューションの注力点が異なります。この3分野を別々にその分野での審査を注意深く行い、最終的に総合的見地から、さらにその中でデザインソリューションが際立って優れたものを特別賞審査委員会に提示し、上述の結果となりました。
審査委員がもっとも留意した評価ポイントは、「デザインコンセプトそのものと、その結果としての商品デザインが適切に合致しているか」です。
残念ながら今回受賞に至らなかったデザインはその点が未熟であったと判断したものが大勢です。例えば、使用者の労働負荷の軽減を中心コンセプトとした商品デザイン開発を謳った審査対象に対しては、その点をデザインが如何に解決したかを確認します。また、人間が関わる部分の形状がエルゴノミクスから離れた結果となっている場合は、たとえ表面上の美しさを備えていても、デザイン解決が商品の「目的」から離れたものであると判断し、そのデザインマネージメントに問題があると判断され、不合格となりました。また、この様な事例の商品が、仮にプラスティック素材を使用している場合、そのコストパフォーマンスの見地から、明らかに金型設計コスト削減がされ、デザインソリューションのために求められたフォルムを実現できなかった商品が見受けられました。この場合、企画から製品化までの間のどこかに要因があることが明らかで、デザイナーの力不足が原因とは必ずしも言い難くなります。このようにグッドデザイン賞は、商品ができるまでのデザインの総合的調整・解決に審査のポイントを置いています。
その他、生産工程で、外装部、実装部に安全面での問題が発生しているものも見受けられました。それらは審査基準を概ね満たしているにも関わらず、生産時のごく初歩的な不備が見られます。例えば板金、プレス、樹脂部材の最終処理監理が悪く、使用者がケガをする可能性が危惧されたものがしばしば見られました。金属プレスのままで木口処理が不適切なものなどは、手を切る危険性を感じさせます。たとえ外観が良くても実装・内装で、後加工処理が不十分なものは、デザインマネージメントが実践されていない、或いは「デザイン」をまだ「色・かたち」として捉えている域を出ていない商品と思われます。製品のローコスト製造は企業にとって極めて重要な命題ですが、そこで製品の品質や安全管理を見失うと「デザイン開発」とは言えないことになります。
最後に、パーラーチェアやスロットマシン等のアミューズメントの商品デザイン評価には長い議論を要したことを報告しておきます。この商品のデザイン性、評価ポイントの設定は、他の商品とは違う視点を要求されるからです。それは、家電商品、日常生活用品、車、コンピュータ等のデザインの進化や高度化とは違う系統に属しているからです。今後、アミューズメントの商品デザインは、さらに多くの応募を期待します。それによって審査方針の深度が深まり、アミューズメント商品デザインの時代の方向性、進化を明快に提示することが可能になると期待されます。
今年度の審査を振り返ってみると、「デザイン」と呼ばれる領域が拡大している中で、グッドデザイン賞には、「デザイン」の意味が不明瞭にならないよう新たな枠組みの整理・整備が求められるのではないかという印象を強く感じました。