GDA2002 WINNERS 審査委員・審査講評 賞の構成 大賞 エコロジー賞 中小企業庁長官賞 ロングライフ賞
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審査講評
商品デザイン部門 審査ユニット1
ユニット長 山村真一

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生活に密着したデザイン
審査ユニット1には、身の回り用品、育児・教育用品、ハンディキャップト・加齢配慮用品、衣料、健康管理用品・機器など多岐にわたる生活関連用品が審査対象として集められた。また、商品のサイズも、直径数ミリの極小ミニ電池から、公園等に設置される遊具システムまで、素材もソフトファブリックのアンダーウェアから介護ロボット、電動車イスまでに至り、実にさまざまな商品がノミネートされた。
社会全体が低成長の時代にあって、新商品の登場チャンスが少なくなり、マーケットがあまり明るくない状況にもかかわらず、この商品領域の応募点数は年々増加の傾向にある。これは、生活に密着し、身近なところに位置する商品群のマーケットが、他に比べ元気で活性化していることを反映しているのではないだろうか。さらに従来と比べると、今年度ここに集まった商品全体のデザインレベルは一段と高くなってきているのがわかる。しかし一方で、特に群を抜いて目立つほど話題の商品が少なかった事は残念であったと言わざるをえない。

審査概要
一次審査から二次審査の間に各審査委員が市場でのチェックと売り場でのヒアリング調査なども行い、マーケットにおける商品の位置づけ等のリサーチをした後で二次審査に入った。
二次審査では、5人の審査委員が1点づつ現物と資料を前にして個別に判断し、その後全体のレベルの中で、受賞基準をどこに設けるか等の論議を行い、受賞対象を絞り込んでいった。一次審査において少しでも問題点を残した応募対象は、すべて現物審査でその問題点を確認し審査することを決めて二次審査に入ったのであるが、応募データだけでは理解できなかったシリーズ展開がなされていたり、逆に応募データの写真が素晴らしくても現物を見て操作してみると意外な欠点に気付くものもあった。この部門は特に現物審査が重要であることを再認識した。
前年度と同様に、シャープペン、ボールペン、メガネ、シェーバー、時計といった成熟度の高い商品と、ハンディキャップトや加齢配慮商品等、これから成熟期に入りつつある商品が混在するこのユニットの審査では、受賞水準の設定について慎重に論議を行った。商品群ごとのデザインレベルにギャップがあることを前提に個々の商品の合否判断には相当な時間を費やした。二次審査終了後には全審査ユニット長による会議によって、全部門の審査結果を同時に比較しながら論議を重ね、最終審査結果に至った。
新しく登場してきた分野としては、1000億市場といわれているマッサージチェア、視聴覚サポート商品、車イス、ベット、ウェア類等の高齢者対応の商品群である。高齢社会の到来、ユニバーサルデザインブームの影響もあるが、今後も市場において大きなウェイトをしめる分野に成長していくことだろう。この分野も全体としてみると、デザインレベルは相当上がってきてはいるのだが、今ひとつ超えられていない印象があるのはなぜだろうか?

今年度の審査を終えてみると、ベーシックデザインをきっちりと守る商品群と、思い切って将来にかけるアドバンスドなデザインを、並列的にせめる開発システムが、少し足りないような気がしてならない。自動車等のデザイン戦略をみると、この開発システムが上手に生かされている事がわかる。これらはマーケットを、今よりさらに元気にして、活性化させるためにも大切なことではなかろうか。今回の審査でもう一つ気になることは、商品のカラーリング計画の弱さが目立ったことである。これは、このパーソナル分野の商品だけでなく、すべての領域に共通する事でもあるように思う。カラーリングは、素材、生産ロット、生産技術等と、商品の経済要素と大きくリンクされていることはよくわかるが、市場やユーザー側の視点から考えると、商品開発計画上もっとも大切な部分とも言える。カラーリング計画は現在のように市場のムードに明るさが期待される状況においては、なおさらデザイン側が重要視すべきテーマだと思う。
さらに付け加えるとすれば、商品操作インターフェイスのピクトグラムデザインのまずさが目につく。不明確で美しくないピクト表示の商品が多く、これから世界で初めての超高齢化社会を迎える日本の商品としても、是非もう一度ユーザーの身になって頑張ってほしいと思う。
また、今年度も受賞商品の中で中小企業の積極的な姿勢が目立ってうかがえたように思う。中小企業が新しい商品開発や新しい市場へ果敢に挑む姿からは、現在の大企業も、中小企業の姿勢や頑張りを見習い、初心に返ることの必要性を感じずにはいられない。