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2010年度受賞結果の概要

審査講評

ユニット9:公共・文化教育関連施設、土木・環境関連施設、まちづくり・地域づくり
南雲 勝志 デザイナー

ユニット9は社会領域のなかで土木環境関連施設、公共施設、まちづくりを中心にしたユニットである。環境やエコへの考慮はすでに当然となり、低成長少子化の時代のなかでいかに地域に勇気と元気を与え、我々が今後向かうべき方向を示唆し、結果的にユーザーにどんな利益をもたらしているか、が議論の中心であった。結果的にはそれらに対し、明快な回答を示してくれた応募が例年に比べ多かった。
このユニットからは金賞候補として、「きぼう 日本実験棟」と「旧佐渡鉱山北沢地区工作工場群跡地広場および大間地区大間港広場」の二点が挙げられた。「きぼう」は参加企業650社に及ぶ日本が誇る先端技術の結集であり、先進各国に負けないレベルで日本初の国際宇宙ステーションを成功させた。地上の価値観の次元を越え、未来に向かうまさに希望を与えてくれる。金賞には至らなかったが、「旧佐渡鉱山〜広場」は世界遺産に向け、埋もれていた一連の近代化遺産を再調査保存し、丁寧に広場をデザインすることで、佐渡島の新たな価値をつくり、文化を次世代へと引き継いだことが評価された。サステナブルデザイン賞の「山梨市庁舎」は合併を機に、民間工場からコンバージョンされた施設であるが、それを感じさせない品格と、市民に親しまれる良質な空間を作り、かつコストを新築の半分以下に抑えている。今後確実に増えるであろう、同様の整備の良き模範となると思われる。
中小企業庁長官賞の「土佐くろしお鉄道中村駅」は地方鉄道のあり方を探り、四万十ヒノキを使用した大胆でユニークな改修デザインだ。心地良い空間を利用者に与え、大手ではできない中小企業の底力を見せてくれた。
今年の傾向としてリノベーション、コンバージョンをはじめ、すでに存在するものを再評価し、新たな価値を与えるという大きな方向性が浮かび上がってきた。これは偶然ではなく、今本当に必要なデザインは何かという本質に対し、真摯に問い正した結果生まれた、時代の潮流であろう。