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2010年度受賞結果の概要

審査講評

ユニット5:オフィス関連機器設備、販売・展示関連機器設備、医療関連機器設備、福祉関連機器設備、教育関連機器設備、公共機器設備
ムラタ・チアキ プロダクトデザイナー

今回のユニット5は、様々な分野が複合し、ユニット名を一言でまとめられない。ただ、俯瞰するうちに、一つの共通するキーワードが見えてきた。それは、「空間の共有化」である。
このユニットではオフィス空間を構成するパーティションや設備機器、照明、オフィスインテリア、そのデスクに置かれる文具までを包含している。そのため、文具の中でもオフィス向きの商品が、このユニットに分類されている。今年の審査では、オフィスでの時間を快適に過ごすための、より洗練されたアダルトな空間、設備提案が多かった。フリーアドレス制(空間の共有化)のオフィスが増える中での、椅子やテーブルの在り方やコミュニケーションを喚起するカタチなど、機能やデザインだけでないメンタルな機能が多く提案された。しかし、文具に関しては、その方向性とは真逆のパーソナルでPOPなデザイン提案が多かった。実は、これは「共有するオフィス文具」という常識から、「携帯するパーソナル文具」への移行が始まっているためとも考えられる。筆記具、綴じ具、ノート、消しゴム、テープディスペンサー、修正ペン、デジタル文具などの文具アイテムが、よりパーソナルな表情を帯びてきている。オフィス空間のコーディネートパーツとしての文具か、フリーアドレスオフィスを楽しんでいる個人の持ち物としての文具か、両極の文具デザインが見えてきた。
教育の分野でも同様に空間が変わろうとしている。教育現場のICT化によって、学校の風景だった黒板が、多目的電子ボードに変わり、生徒と先生とのコミュニケーション(空間の共有の仕方)が変わろうとしている。店舗設備では、厨房側にあった製菓製パンオーブンをお店側にショーケースとして窓を設け、パン作りを可視化し、製造過程をお客さんと共有する試みが見える。医療、福祉分野では、在宅医療や看護の必要性から、小型軽量化によって、病院以外の空間でも活躍できる商品提案が多かった。また、公共空間のシャンデリアなど、LED照明へのエコ替え需要では対応できなかった装飾電球も、同じデザインのLED灯具への差し替えによって、今までのシャンデリアを生かし続けることができるという商品があった。この提案もサステナブルな空間の共有化を促すものではないだろうか。